移植前の時点でレシピエント血清中に抗ドナーHLA特異的抗体(DSA)が高度に存在する場合、移植後に抗体関連型拒絶反応を発症し、移植臓器が廃絶する危険性が非常に高いため移植は禁忌とされている。我々はこのような高度に感作した移植希望患者に対して、B細胞分化様式に即した脱感作療法を独自に考案し、DSAの産生を制御し移植を可能とさせた。しかし長期の脱感作期間を要し、中には脱感作困難な症例も存在するためプロトコールの更なる改良が望まれている。本研究では高感作マウスモデルで我々が臨床応用している脱感作療法の改良と新薬の可能性について検証し、今後の実臨床へ応用することを目的とした。 高感作マウスモデルはBalb/cマウスにC57/BL6マウスの皮膚を2回移植する方法が、最も効果的に抗ドナー抗体を産生することを明らかにした。次いで抗CD20抗体を感作マウスに投与し脱感作を試みた。その結果、抗CD20抗体の単剤投与では抗ドナー抗体価は若干低下するものの完全に消失することは不可能であった。また抗CD20抗体投与前後における、抗ドナーT細胞応答を解析したところ、抗CD20抗体投与後では、抗サードパーティーT細胞応答と比べ、抗ドナーT細胞応答が有意に亢進していることを明らかにした。さらに抗CD20抗体投与後のMLR培養系に感作マウスの脾臓B細胞を添加すると、CD4陽性T細胞の抗ドナー応答は減弱すること、またMLR培養上清中にはIL-10が増加しており、感作マウスの脾臓B細胞にはIL-10陽性細胞数が有意に増加していることを明らかにした。すなわち抗ドナーT細胞応答亢進の機序には、制御性B細胞 (Breg) の欠落が影響しているのではないかという知見を得た。
|