研究課題/領域番号 |
17K10517
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
上野 康晴 横浜市立大学, 医学研究科, 特任助教 (60375235)
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研究分担者 |
谷口 英樹 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (70292555)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 癌微小環境 / 癌オルガノイド / 治療抵抗性 / 薬剤評価 |
研究実績の概要 |
本研究は、ヒト膵癌を対象とするin vitro薬剤評価系の確立に向け、腫瘍微小環境を有するヒト膵癌組織を人為的に再構成するための基盤技術を確立することを目的としている。初年度において、膵癌細胞株と間葉系細胞の三次元共培養により、膵癌オルガノイドの再構成が可能であることを見いだした。そこで、 本年度は、膵癌オルガノイドを均質に製造するための培養系の検討、および、膵癌オルガノイド内の膵癌細胞数を評価するための手法の検討を進めた。 底面に小型のディンプルを有した培養プレート(マルチウェル型)上に膵癌細胞、間質細胞(間葉系細胞、血管内皮細胞)を播種したところ、個々のウェル内に配置された各ディンプル内で、三次元的な膵癌オルガノイドが形成されることが確認された。再構成された膵癌オルガノイドのサイズをイメージング解析によって評価したところ、均質なサイズのオルガノイドが形成されていることを確認した。これらの検討により、均質なサイズの膵癌オルガノイドを大量に作出するための基盤技術を確立した。 また、膵癌オルガノイドを対象とする薬剤評価に向け、オルガノイド内の膵癌細胞数を定量的に評価するための検討を進めた。ルシフェラーゼ遺伝子を膵癌細胞でのみ発現させることにより、ルシフェラーゼアッセイ系を用いて膵癌オルガノイド内の膵癌細胞数を評価できる条件を確立した。これにより、膵癌オルガノイドを対象とする薬剤評価のための基盤技術を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、膵癌オルガノイドを用いた薬剤感受性評価系の開発を進めた。申請者らが先に確立しているヒトiPS細胞由来肝芽(hiPSC肝芽)創出技術を膵癌オルガノイドの再構成に応用することにより、均質なサイズの膵癌オルガノイドを大量に作出するための培養系を確立することが出来た。さらに、癌オルガノイド中の膵癌細胞数を評価するためのイメージング解析系を構築した。これらにより、膵癌オルガノイドを対象とする薬剤評価のための解析基盤が確立した。 概ね、当初計画通りに進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に確立した膵癌オルガノイドの再構成法および膵癌細胞数の評価法を薬剤評価に応用する。膵癌オルガノイドの薬剤アッセイにより、オルガノイド再構成法の有用性や課題を抽出しながら、スループットの高い薬剤アッセイ系の確立を進める。既に本年度において、ルシフェラーゼ遺伝子導入膵癌細胞を用いることにより、膵癌オルガノイド内の膵癌細胞数を定量的に評価できることを確認している。次年度においては、更に簡便な評価手法を検討し、膵癌オルガノイドの抗がん剤感受性等を効率良く評価するためのプラットフォームの確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の過程で膵癌オルガノイドを大量に製造するための培養条件が明らかとなった。実験規模を拡大するため、ディンプル加工が施された培養皿等を取り寄せたが、供給が不安定となっており予定以上の納期が必要となることが判明した。代替法を検討したが、同等の特性を有する製品を調達することができなかった。次年度において、培養容器の供給体制が整った後、検討を進めることとした。
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