研究課題
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の増加により、Marginal graftの中でも最も遭遇する脂肪肝グラフトは術後グラフト機能不全の発症が高率であり、その成因は主に脂肪変性による正常肝細胞の減少と全身性感染症などの2nd Hitによる炎症性変化(肝細胞壊死やApoptosis)や線維化が原因と考えられる。スタチン系薬剤薬剤(HMG-CoA還元酵素阻害薬)が持つ多面的効果 (pleiotropic effect)、特に抗酸化・抗炎症作用と血管内皮機能改善作用、脂肪沈着抑制作用に着目し、脂肪肝グラフト移植時における肝内因性の障害(1st Hit)をスタチン投与により抑制する。さらに肝外因性障害であるShear stressを脾摘で軽減し、腸管鬱血からのBacterial translocationや随伴する全身感染症を選択的消化管除菌治療(SDD)で予防する事で、肝内外の1st・2nd Hitを抑制し、より簡便で非侵襲的に周術期のスタチン投与・脾摘・SDDという臨床に直結する手技的にも簡便な方法で、過小グラフトやmarginal graftの機能不全が回避・克服できる可能性がある。本研究での方法を臨床応用できれば、より安全な肝移植治療が施行可能となり、それに伴いドナープール拡大が期待でき、グラフト不足解消の一助となる画期的な研究である。今後継続してラットのNAFLD過小肝移植モデルを作成し、スタチン投与・脾摘・SDDを追加した群での治療効果を検討していく研究である。
3: やや遅れている
ドナーラットにMCDD (メチオニン・コリン欠損食)を投与し、60%程度のsevere NAFLD model ratを作成しているが、脂肪肝の程度に差があって安定しておらず、移植後に脂肪肝が組織学的評価で容易に改善してしまう症例がやはり認められる。徐々にモデルやデータの蓄積はできつつあるが、ドナーの脂肪肝を安定させて、さらにモデル数を蓄積してデータ収集を行う必要がある。また30%過小グラフト移植は非常に手技が繊細かつ高度な技術を要する術式であり、担当関係者がその手技の確立・安定化に時間を要しており、やや進捗状況は遅れていると判断している。
高度脂肪肝グラフトドナーの作成および30%過小グラフト移植の手技を可及的速やかに安定させ、30%過小グラフト移植の症例数 を増やし、各種治療群での術後のグラフト機能に関するデータ収集を進めて解析を進める予定としている。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件)
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