本研究は、小児肝移植後レシピエントの定期肝生検の肝組織を用いて、肝細胞のテロメア長を組織Q-FISH法によって測定し、テロメア長を“グラフト臓器年齢”や“グラフト臓器寿命”の指標にできるかを検討することが目的である。そのためには、まずコントロールが必要である。これまで非肝疾患の剖検例として0-5才の10例の肝臓と、肝移植時にグラフトとして使用せずに残ったドナー肝臓(27-36才)の7例をコントロールとして、肝細胞のテロメア長を測定した。この結果により正常肝のテロメア長の加齢曲線を明らかにした。 2021度より生体肝移植後症例の肝組織の組織Q-FISH法を開始した。移植後1カ月以内に拒絶反応があった症例の経時的なテロメア長の変化として移植時、拒絶反応時、2年or 5年時にテロメア長を4例(12検体)測定した。また、拒絶反応症例がなかった症例の経時的なテロメア長の変化として移植時、2年時、5年時、10年時にテロメア長を3例(12検体)測定した。 今回の研究では拒絶反応症例と非拒絶反応症例においてテロメア長の経時的変化に一定の傾向を認めることができなかった。本年度で研究は終了になるが、今後は移植時乳児症例と移植時学童症例の移植後年度別(移植時、2年、5年時、10年時のペア)に採取された肝生検の肝組織を用いて、肝細胞のテロメア長の測定を継続したいと考えている。またさらに症例を蓄積し、小児生体肝移植後のテロメア長によるグラフト肝年齢の解明に迫りたいと考えている。
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