研究課題/領域番号 |
17K10523
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
水田 耕一 自治医科大学, 医学部, 教授 (00313148)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 小児肝移植 / Operational tolerance / 免疫抑制剤離脱 / 免疫寛容 / キメリズム |
研究実績の概要 |
本研究は、免疫抑制剤から離脱し臨床的免疫寛容となった小児肝移植患者らを対象に、血清学的検査、免疫学的検査、病理組織学的検査を行い、免疫寛容のメカニズム解明を追求すると同時に、免疫抑制剤離脱可能な患者(Operational tolerance:OT)と困難な患者の鑑別を示す簡便なマーカーを同定することが目的である。 平成29年度は、我々が考案した免疫抑制剤減量プロトコールに基づき、小児肝移植後長期患者における免疫抑制剤減量・離脱例の蓄積を行った。免疫抑制剤減量プロトコールによるOTトライアルの条件は、1)肝移植後2年以上経過、2)過去1年間の肝機能が安定、3)ステロイド非服用例、4)免疫抑制剤タクロリムスの血中濃度が基準値(2.0ng/ml)以下、5)タクロリムスの投与量が基準値(0.05mg/kg/day)以下、を満たす患者であるが、本年度は該当する患者がなく新規エントリーは行わなかった。これまで24例のOT患者においては、免疫抑制剤離脱の状態が維持できた。OTトライアル中の2例において、プロトコールでの更なる減量が可能であった。1例はステージ5(週に1回)からステージ6(2週に1回)、ステージ7(月に1回)を経て免疫抑制剤離脱となった。1例はステージ3(週に3回)からステージ4(週に2回)、ステージ5(週に1回)を経てステージ6(2週に1回)まで免疫抑制剤を減量できた。OT患者、及びOTトライアル患者に対しては、免疫グロブリン、各種自己抗体(抗核抗体、抗平滑筋抗体、抗ミトコンドリア抗体)、抗HLA抗体、線維化マーカー(ヒアルロン酸、M2BPGi)を定期的に測定し、その推移と臨床経過、肝機能を比較検討した。本年度までの研究成果は、日本移植学会総会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Operational toleranceとなった免疫抑制剤離脱症例の定期肝生検の実施例がなく、生検標本を用いた病理組織学的検討、Y染色体プローブを用いたキメリズムの検討ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、外来患者において安全な免疫抑制剤減量を行い、免疫抑制剤減量・離脱例の蓄積を行っていく。対象における血清学的、免疫学的検討より、OT患者と非OT患者の鑑別を示す簡便なマーカーを同定したいと考えている。また、OT患者の肝生検標本を用いた病理組織学的検討、Y染色体プローブを用いたキメリズムの検討を行い、免疫寛容のメカニズム解明に迫りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
免疫抑制剤離脱症例の肝生検標本を用いた病理組織学的検討が実施できなかったため、次年度使用額が生じてしまった。繰り越しの使用額は、病理組織学的検査にかかる免疫染色試薬(組織FISH用)などの物品費に使用する予定であり、次年度に計画通りに研究が遂行できれば使用可能である。
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