研究課題/領域番号 |
17K10529
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研究機関 | 明治国際医療大学 |
研究代表者 |
山田 潤 明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 教授 (80351352)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | トレランス / 臓器移植 / 角膜移植 / 培養角膜内皮細胞移植 / ACAID / 心臓移植 / 生体肝移植 |
研究実績の概要 |
最終目標は、「ドナーの細胞を培養し、前房内に移植する事によってドナーアロ抗原に対するトレランスを誘導して臓器移植の生着を勝ち取ること」である。生体肝移植などにおいては、ドナーが生存しているため、ドナーに対するトレランスを誘導してから臓器移植を施行することも可能である。それには、(1)ドナー細胞を前房内に安全に生着させる事、(2)トレランス誘導を証明すること、(3)臓器移植をも生着させる事を証明すること、(4)ヒトへの応用に向けたプロトコールを作成する事、が本研究の流れである。まずはマウスモデルを用いて(1)(2)を検討した。前房内に角膜内皮細胞を移植した際には拒絶応答も生じず、安全にドナー細胞が生着し、8週間経過後はドナーに対するトレランスが誘導されていることが明らかとなり、全層角膜移植は完全に生着することが明らかとなった。さらに、心臓移植においても有意に生着することが分かった。しかし、臓器特異的に発現しているアロ抗原を抑制出来ないと考えられ、心臓移植において急性拒絶は100%抑制されたにも関わらず、心筋細胞内に炎症応答が生じていたため、さらなる解決策が必要となった。まずは、血管内皮細胞を用いたところ、前房内に注入した際にはほぼ全例において前房出血を来す事が始めて明らかとなり、トレランス誘導が実現したとしても視力を失う結果となるため臨床応用には問題があることが明らかとなった。そこで、前房出血を生じないような薬剤治療の検討や前房を用いずにトレランスを誘導できる手法の開発を手がけている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ドナー細胞を前房内に移植して長期生着させる事によってトレランスを誘導可能であることは明らかとなった。健常人ドナーから角膜内皮細胞を採取することは不可能であるため、血管内皮細胞の採取というプロトコールを考案したが、マウスモデルにおいて血管内皮細胞の前房内注入では高率に前房出血が生じる事が判明し、種々の治療を施しても避けることが出来なかった。臨床においては視力低下や緑内障などの合併症が生じる事となるため、この手法は非現実的と考えられた。前房内に移植することを主として考慮する場合は、内皮細胞を変異させて使用する仮説が考えられ、また、前房以外に移植する事を主として考慮する場合は、前房で生じさせる事が出来るトレランスを前房以外で誘導する手法を開発せねばならないため、TGF-β処理をした抗原提示細胞の静脈注射などの方法に置き換えて現在検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
前房内に長期生着したアロ細胞が誘導するトレランスは非常に強力であり、マウスモデルにおいては全層角膜移植をアロ抗原特異的に完全生着させることが出来る。Immune Privilege siteにおいて、アロ細胞が拒絶されずに長期生着する状態が必要と考えており、(1)内皮細胞以外の線維芽細胞を使用する、(2)血管内皮細胞を出血関連因子を出さないように治療を加える、(3)前房以外で同様のトレランスを誘導出来る報告(Sano Y et al. Curr Eye Res. 1997 や、Okamoto S et al. Transplantation. 1995)を応用して、TGF-β処理をした抗原提示細胞の静脈注射などの方法に置き換えて心臓移植生着が実現できるかどうかを検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度において、マウス血管内皮細胞の購入に関して、米国業者のミスによって数度の購入変更に見舞われた。その後、血管内皮細胞を前房内に入れることで、想定外の前房出血を来す事が判明し、予定通りの手法ではトレランス誘導による臓器移植の生着は実現しても、視力低下などの合併症が生じる可能性が高いことが判明した。前房出血しない手法の開発、前房出血せずにトレランスを誘導出来る細胞の選択を行っているため、本来の研究に要する費用は次年度に持ち越している
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