研究課題/領域番号 |
17K10535
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
林 秀樹 千葉大学, フロンティア医工学センター, 教授 (20312960)
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研究分担者 |
吉田 憲司 千葉大学, フロンティア医工学センター, 助教 (10572985)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リポソーム化製剤 / バブル化リポソーム / 光線力学療法 / 光免疫療法 |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究として,以下の3項目に関し検討を行った。 (1)リポソーム化BCG-CWSの粒径及び形状の再確認 BCG-CWSをリポソーム化するに当たり,ペンタンを溶媒として用いたり超音波ホモジナイズを利用することにより平均粒径100-500nmに整形し得たが,いずれの条件でも均一な製剤とすることは難しく,1μm以上の粒径の生成物を含んでいた。そこで調整したBCG-CWSの透過型電子顕微鏡(TEM)による解析を行った。その結果,超音波処理を行ったサンプルのみからサブミクロンサイズの粒子が得られていることが確認された。蛍光化リポソームに関しても,動的散乱法などによる粒径評価と一致するサイズの粒子が確認された。 (2)リポソームからの内容物放出を確認するシステムの確立 近赤外線照射によりリポソームが破壊され,内包内容が放出されることを確認するため,量子ドット(QD)を使った計測システムを構築した。ゲル濾過を用いてQDとリポソームを分離する予定であったが,本年度の検討では期待した分離が得られず,本法を用いた内包内容の放出効率の評価は次年度へ持ち越すこととなった。 (3)蛍光化ナノバブルの作製 リポソームを放出するベシクル凝集体へのナノバブルの取り込みを確認可能にするため,ICG-C18リポソームの超音波照射により,ナノサイズリポソームのバブル化を試みた。生成されたものは粒径200-400nm程度のリポソーム中にエアバブルを内包するものであり,in vitro,及び家畜ブタの下肢リンパ系を用いたin vivoの解析において,近赤外蛍光及び診断用超音波装置両者で検出可能なことが示された。このバブル化蛍光リポソームは生体中のリンパ流を3次元的に可視化できることが明らかとなり,リンパ系ナビゲーション手術への大きな貢献が期待された。現在特許出願準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)本年度の検討では,TEMによる粒子性状の評価など,本研究計画で考案したナノ粒子が確実に生成されているかどうかを確認する手段の構築から始めたため,リポソーム化BCG-CWSの試作計画に遅れを生じた。しかしながら,これは今後の実験計画の確実な遂行のためにはむしろ必須なものとと考えられ,無駄なものではなかったと考えている。 (2)粒子径の大きく異なるQDとリポソームがこれまで利用してきたゲル濾過カラムで分離ができなかったことは大きな誤算であった。また,分離に適切なカラムを再度選定し直すためのサンプル入手が困難であったり,これまで利用していたQDが生産中止になるなど,予想外のトラブルが重なったことから実験計画にかなりの遅延を生じた。 (3)しかしながら,実験の評価システムとして開発したバブル化蛍光リポソームが生体中の三次元リンパ動態解析に有用なことが明らかとなり,臨床応用を目指した新たな研究テーマの起点となり得たことは想定外の成果であり,(1)(2)の実験計画の遅れを補って余りあるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)TEMを用いたナノ粒子の評価法がほぼ確立したため,当初から予定していたBCG-CWSナノ粒子の作製を行い,期待するサイズの蛍光化粒子が生成されることを確認する。リポソーム化により期待するサイズの粒子化が難しい場合には,BCG-CWSに蛍光色素を直接共有結合させ,水性懸濁液や油性懸濁液として粒子化を図り,TEMによる性状評価を行う。 (2)QDを用いたリポソーム破壊時の内包内容放出量の正確な計測システムの構築に関しては,リポソームからゲル濾過を用いた分離の難しかったQDを他のものに変更するなどして問題に対処を行う。また,それでも分離の難しい場合などには遠心沈降法など,他の方法も試みることを予定している。 (3)バブル化蛍光ナノリポソームに関しては,ベシクル凝集体への取り込みを行い,超音波照射などによるベシクル破壊効率への貢献性を評価する。また,使用する脂質やガスなどを調整し,生体内における長寿命化を検討する。
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