研究課題
本研究グループはこれまでに多能性幹細胞のキメラ形成能を利用した「胚盤胞補完法」で膵臓欠損マウス/ラットの体内にラットあるいはマウス多能性幹細胞由来の膵臓を作製することに成功しているが、血管吻合を伴う臓器移植の場合、MHC不適合の血管内皮細胞は移植片拒絶の標的となる。したがって、拒絶反応を起こさない移植可能な臓器の作製には、臓器のみならず臓器内の血管内皮細胞も同時に多能性幹細胞から作製する必要がある。本研究では、多能性幹細胞由来の血管内皮細胞を作製するために、血管内皮・血液欠損(Flk-1遺伝子欠損)マウス受精卵を用いて胚盤胞補完を行った。その結果、血管内皮・血液が欠損したマウスは発生初期の胎生期に死亡するが、胚盤胞補完法を用いて血管内皮・血液欠損マウス受精卵に正常なマウス多能性幹細胞を注入して作製した同種間キメラマウスでは、腫瘍形成などの異常もなく成体まで発育し、マウス多能性幹細胞由来のみで構成された血管内皮および血液を作製することに成功し、「in vivoにおける臓器内の血管内皮再構築法の開発」を達成した。最終年度は、異種であるラット多能性幹細胞と血管内皮・血液欠損マウスを用いて胚盤胞補完法により異種間キメラを作製したが、胎生期に死亡しラット多能性幹細胞由来のみで構成される血管内皮および血液を作製することはできなかった。不完全な補完が未発達な血管新生・造血による胎生致死を引き起こすことから、発生初期の血管内皮・造血細胞へのラット多能性幹細胞の寄与率の向上が今後の課題となる。本研究グループは動物体内で多能性幹細胞由来の臓器作製に取り組んできたが、今回の成果を組み合わせることで、目的の臓器だけでなく臓器内の血管内皮と血液細胞も同時に多能性幹細胞から作製可能となり、本研究成果は動物体内での拒絶反応を起こしにくい移植用臓器の作製法として再生医療に貢献するものと期待される。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Stem Cell Reports
巻: 14 ページ: 21-33
10.1016/j.stemcr.2019.11.008.