研究課題/領域番号 |
17K10538
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
五十嵐 麻由子 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (50790284)
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研究分担者 |
永橋 昌幸 新潟大学, 医歯学総合病院, 研究准教授 (30743918)
土田 純子 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (90769415)
小山 諭 新潟大学, 医歯学系, 教授 (10323966)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 抗エストロゲン剤耐性株 / スフィンゴシンー1ーリン酸 / スフィンゴシンキナーゼ1型 |
研究実績の概要 |
乳癌ホルモン療法における耐性機序の解明と克服は重要な課題であり、現在耐性機序としてERK及びAKT経路の活性化が報告されているが、これらの経路を上流で統括制御している分子機構は未だ解明されていない。申請者は「乳癌において、S1P産生酵素であるスフィンゴシンキナーゼ1型(SphK1)が高発現することで、エストロゲン刺激に関わらずERK及びAKT経路が恒常的に活性化され、ホルモン療法耐性に寄与している」という仮説をたて、本研究を企画した。本研究の目的は「S1P情報伝達系を介したホルモン療法の耐性機序を解明し、新たな治療開発へ向けた研究基盤を確立すること」である。申請者らはこれまでにエストロゲン受容体のnon-genomic効果によって脂質メディエーターであるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)の産生が促進され、S1P情報伝達系がERKおよびAKT経路を共に活性化し、乳癌の生存に寄与することを明らかにした。本課題研究では、TAM耐性株を樹立するため、長期間において低濃度TAM在下でMCF-7細胞の培養を継続している。また、遺伝子改変ツールであるCRISPR/Cas9によりSphK1をノックダウンあるいは過剰発現させたMCF-7細胞株を樹立した。さらにTAM耐性MCF-7細胞株において、ホルモン療法耐性におけるS1Pの役割を細胞生存能及び細胞シグナル解析により検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、課題研究Aに続き課題研究Bを中心に研究を進めてきた。また、課題研究Cについても臨床検体のリピドミクス解析に着手した。 研究課題A タモキシフェン(TAM)耐性乳癌細胞株を樹立し、ホルモン療法耐性におけるスフィンゴシンキナーゼ1型(SphK1)及びスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)の分子機構を解明する。またTAM耐性株において遺伝子改変ツールであるCRISPR/Cas9によりSphK1をノックダウンあるいは過剰発現させ、ホルモン療法耐性におけるSphK1の役割を細胞生存能及び細胞シグナル解析により検証する。 研究課題B 課題Aで樹立した、SphK1を恒常的に過剰発現もしくはノックダウンさせたTAM耐性株のヌードマウスへの癌移植実験を行い、SphK1及びS1Pのホルモン療法耐性機序における生体内での役割を解析する。また、S1Pシグナルを標的とした薬剤治療の有効性を動物実験により検証する。 研究課題C ER陽性乳癌につき、生検標本及び手術切除標本に対して抗SphK1抗体を用いて免疫染色を行いSphK1の活性化を評価する。またSphK1のリン酸化とS1P濃度を解析し、臨床病理学的因子や患者の予後との関連を比較検討する。これによって、SphK1活性化及びS1Pの臨床的意義を検証する。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、課題Cを推進し、これまでに行った、乳癌患者の手術検体、血清、血漿のリピドミクス解析の結果を臨床データと比較し、統合解析を行う。 研究課題C ER陽性乳癌につき、生検標本及び手術切除標本に対して抗SphK1抗体を用いて免疫染色を行いSphK1の活性化を評価する。またSphK1のリン酸化とS1P濃度を解析し、臨床病理学的因子や患者の予後との関連を比較検討する。これによって、SphK1活性化及びS1Pの臨床的意義を検証する。また、課題A~Cを統括し、学会発表、論文としてまとめていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験試薬の納期が遅れることになったため、次年度予算で発注し、実験を行う予定である。
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