研究課題
進行乳癌に対する新たな治療戦略の1つとして、免疫チェックポイント阻害剤を含めた免疫細胞療法が、注目されている。しかし、癌微小環境には様々な免疫抑制機構が存在し、特に、免疫チェックポイントを介するT細胞機能不全は、同治療法の効果を著しく損なうと考えられる。本申請研究では、乳癌の癌微小環境におけるT細胞の免疫抑制機構(特に、乳癌細胞のPD-L1発現機構の解明に重点を置く)を詳細に検討し、免疫細胞療法の開発に努めた。本申請研究により我々は、① phospho-STAT1(細胞内におけるIFN-γ伝達経路に存在する分子の1つ)陽性乳癌細胞ではPD-L1とHLA class Iが共発現していること、② 腫瘍浸潤免疫担当細胞から産生されたIFN-γにより乳癌細胞のphospho-STAT1が活性化されていること、③ 乳癌細胞におけるphospho-STAT1発現が抗PD-1抗体のバイオマーカーとなる可能性があること、を証明した。これらの結果は、進行乳癌症例において、抗PD-1抗体を用いた免疫細胞療法の効果増強やバイオマーカー開発に寄与するものである。今年度、これらの研究成果は、国際的な主要学術誌(International Journal of Oncology)に掲載された。また、我々は、国内外の主要な学術集会(ESTRO38、第27回日本乳癌学会学術総会、第57回日本癌治療学会学術集会など)で本研究の結果について報告してきた。現在、我々は、本申請研究中で得られた新たな知見に基づき、乳癌の各組織型(特に小葉癌)におけるPD-L1発現機構の解明と乳癌症例おけるPD-L1発現とEMT(epithelial to mesenchymal transition、上皮間葉転換:癌の浸潤や転移に関与している)との関連について研究を進めている。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
International Journal of Oncology
巻: 54 ページ: 2030-2038
10.3892/ijo.2019.4779.
癌と化学療法
巻: 46 ページ: 838-840