周術期管理の一環として持続血糖測定器を用いて、糖尿病を基礎疾患に持つ胃癌患者に対する胃切除術後の持続血糖測定を行いその結果を解析した。28例に測定を行い、26例が解析可能であった。術式の内訳は胃全摘10例、幽門側胃切除術13例、噴門側胃切除術3例であった。総測定可能時間は3266時間であり、低血糖状態(測定値70未満と定義)の観測回数は12症例(46%)に19回見られた。3症例で複数回の低血糖状態を観測した(4回、4回、2回)。総低血糖状態持続時間は44.5時間(1.4%)であった。低血糖発生時刻は食後に3回観測されたものの、残り16回は食事との関係性は不明であった。そのうち10回は深夜帯から早朝にかけて観測された。低血糖状態の測定中央値は57(42-68)であった。いずれの場合も自覚症状の訴えはなかった。胃切除の術式別で検討を行った。胃全摘と部分切除(幽門側胃切除術、噴門側胃切除術)の2群で比較した。低血糖状態の観測回数は胃全摘で7症例(70%)14回、部分切除で5症例(31%)5回であり胃全摘が高頻度であった。総低血糖状態持続時間は胃全摘で25.0時間(2.0%)、部分切除で19.5時間(1.0%)であり胃全摘で長い結果であった(p=0.075)。また食後の低血糖状態3回はすべて胃全摘症例であった。胃切除後はそれぞれの持続時間は短いものの、比較的高頻度に低血糖が発生している可能性が示唆された。低血糖状態と食事の関係性は不明な場合が多く、また無症状でありいわゆる後期ダンピング症状とは別のものを捉えている可能性も考えられた。術式別では部分切除よりも胃全摘で低血糖状態が発生しやすいことが示唆された。
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