研究実績の概要 |
我々はマウス乳癌細胞4T1にLuciferaseを挿入した腫瘍株(4T1/Luc)を野生型およびIL-17A欠損(KO)マウス乳腺内に担癌すると、腫瘍径は両群で差がないが、IL-17KOマウスでは野生型に比べて肺転移が有意に抑制されることを見出した。次に4T1/Luc細胞を担癌したマウス血中の循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell: CTC)をLuciferaseを指標に経時的に測定したところ、CTCはIL-17KOマウスと比較して、野生型マウスの血中で多く検出された。この結果よりIL-17Aは4T1細胞が腫瘍局所から血中に入るまでのステップを促進することで肺転移を促進することが示唆された。 転移の形成には腫瘍細胞自身の性質に加え、腫瘍関連マクロファージ(Tumor associated macrophage: TAM)を代表とする間質細胞が重要である。この間質細胞に対するIL-17Aの影響を解析した結果、TAM(CD11b+Ly6C-F4/80+細胞)は野生型に比べてIL-17KOマウスで有意に減少しており、かつM2型マクロファージ(CD206-high, MHC II-low)が有意に減っていた。この結果より、IL-17Aは腫瘍組織において単球からM2型マクロファージへの分化を促進すること、さらに分化したM2型マクロファージを介して肺転移を促進している可能性が示唆された。そこでIL-17Aによる単球・マクロファージの遺伝子発現変化を解析するために、我々は両群マウスの腫瘍からMyeloid系細胞群をセルソーターで分離し、シングルセルレベルでの各細胞集団の遺伝子発現を解析中である。今後、解析で得られた遺伝子を用いて、in vivoでの転移抑制を検証予定である。
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