研究課題/領域番号 |
17K10546
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 栄治 京都大学, 医学研究科, 准教授 (00612897)
|
研究分担者 |
片岡 竜貴 京都大学, 医学研究科, 講師 (20343254)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 乳がん / 脳転移 / 遺伝子発現解析 |
研究実績の概要 |
H30年度はH29年度に予定した通り、既知の遺伝子変化がホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織に対する遺伝子発現解析においても生組織解析と同等に精度高く解析可能であることを確認することを目的として、PDXモデルでの解析を行った。乳癌細胞におけるTGF-beta投与によるEMTマーカーの発現変化をFFPEサンプルと凍結サンプルとの間で比較検討した。TGF-beta投与により認められたビメンチンの遺伝子発現上昇はFFPEと凍結サンプルの間で特記すべき差を認めないことを確認した。 すでに抽出した評価すべき脳転移症例では凍結サンプル解析の保存がすべての症例においては行われておらず、その解析は不可である。そこで、上述の基礎データをもとに、FFPEサンプルでのRNA-seq解析のためRNA抽出、DNAにおける遺伝子解析ならびにエピゲノム解析のためDNAの抽出を行った。 今後得られるであろう分子の臨床的意義の評価を目的に、2004年から2017年における当院にて放射線治療を受けた乳癌脳転移症例を後ろ向きに解析し、乳癌脳転移後予後規定因子の臨床病理学的検討を行った。122例中臨床情報が確認可能な91例を対象に解析を行った。結果、原発巣のフェノタイプだけでなく原発巣治療開始時のTNM因子は脳転移診断後の予後と明らかな相関を認めなかった。すなわち、これまで一般的な予後予測因子とされていた乳癌フェノタイプやTNM因子は、一度脳転移を認めてしまうとそれ以降の予後には影響を及ぼさないことが示唆された。この結果は2nd Annual Advancing CNS Biotherapeutics and Crossing the Blood-Brain Barrier(2019/1/14-15, San Diego)にて発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予備実験に想定したより長い時間を要した。 脳転移組織サンプルの払い出しに想定したより長い時間を要した。 しかしながら、その間に臨床症例での臨床病理学的解析が行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
すでに解析すべき乳癌脳転移症例ならびにそのサンプルからのRNAならびにDNAの抽出は行っており、H31年度で乳癌原発組織、脳転移組織の遺伝子発現解析を癌細胞、免疫細胞に分けて解析を予定する。発現比較解析により脳転移特異的と考えられる分子の同定を行う。さらにここで得られた分子の臨床的意義の解析を臨床症例を対象に解析を行う。また、これら分子を標的としてin vitro、in vivo実験を行い機能的意義の検証を行う。
|