ヒト乳癌脳転移組織サンプルからの脳転移特異的分子の同定は凍結サンプルでの解析は全ての症例での保存がなされておらず断念した。そこでFFPEサンプルでの解析を目的にFFPEサンプルからのRNA抽出を行った。得られたRNAの状態を評価したところRIN値はRNA-seq解析には不十分であることが判明した。そこでヒト組織解析からの脳転移特異的分子の同定は断念しマウス脳転移モデルでの解析へと予定を変更した。 マウス乳癌細胞株であるEMT6を用いた脳転移モデル作成を行った。まずはじめにEMT6-WT細胞のBALB/cマウス頸動脈への注射を行った。その際脳組織に効率良く流入することを目的に外頸動脈、総頸動脈(穿刺部近位側)を結紮したのちEMT6-WT細胞を頸動脈注射した。4週間後脳組織、肺組織を採取し肉眼的に観察したところ転移は確認されなかった。しかし同組織を細片化し細胞懸濁を作成し培養した。それぞれの培養にてEMT6細胞が確認されたためこれを細胞レベルでの脳転移細胞と同定しEMT6-Br1とした。EMT6-Br1細胞を再度頸動脈から注射し脳組織を観察したところ結節が確認され組織採取、細片化し細胞懸濁を再度培養した。これをEMT6脳転移細胞第二世代としEMT6-Br2とした。現在EMT6-WTおよびEMT6-Br2細胞からRNAを抽出しRNA-seqにより遺伝子発現比較解析を行っている。これにより脳転移特徴的な遺伝子群が同定された。またさらに臨床状態に近い形ので脳転移モデルの作成のため、EMT6-Br2細胞をマウスの乳腺組織へ注射しorthotopic breast cancerモデルからの自然脳転移モデルの作成を行った。現在自然脳転移細胞第一世代であるEMT6-MFP-Br1が得られている。
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