研究課題/領域番号 |
17K10550
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
舛本 法生 広島大学, 病院, 助教 (40528014)
|
研究分担者 |
岡田 守人 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (70446045)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 乳房PET / 不均一 / 造影超音波 / 腫瘍浸潤リンパ球 |
研究実績の概要 |
乳房専用PET(Dedicated breast PET:DbPET)は高解像度画像を得ることができる。我々はこのDbPETが乳癌の術前化学療法の効果判定に応用出来うることを証明した。我々はWhole body PETのSUV値が乳癌の予後予測因子であることを証明し、治療戦略につなげた。そしてDbPETのSUV値も乳癌の臨床病理学的因子と相関していることを証明した。 さらに、DbPETは腫瘍内でFDGの均一な集積ばかりでなく、不均一な腫瘍内分布を描出する乳癌が存在することに着目した。DbPETでFDGの不均一な集積を示す乳癌のHE染色の所見は、FDG集積が強い部位に浸潤癌を認め、集積が弱い部位は腫瘍の壊死や線維化などの所見で腫瘍の少ない部位に一致した。これはDbPETが病理像を可視化できる可能性を示唆する所見である。DbPETでFDGの不均一集積を示す乳癌と、均一な集積を示す乳癌の臨床病理学的因子との関係を探索し結果、不均一な集積を示す乳癌は悪性度や増殖能が有意に高かった。一方、ERやHER2の発現状況は不均一集積像の有無とは相関がなかった。腫瘍内の不均一集積を示す乳癌は、腫瘍のsubtypeとは関係なく、悪性度・増殖能が高いことを予測できる。これら一連の研究成果は、DbPETが乳癌における治療方針決定のための予後予測因子として、臨床応用できることを証明した。 超音波検査に造影超音波検査を組み合わせたフローイメージング画像を、病理画像と対比することで腫瘍浸潤リンパ球(TILs: tumor infiltrating lymphocytes)の診断に応用出来うるか検討を開始している。TILs陽性乳癌・TILs陰性乳癌に対してその造影パターンと微細血管の血流分析をしたところ、ある一定の画像所見がTILs陽性乳癌に認められることを解明しつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、①DbPETが術前化学療法の治療効果予測に応用できること、②乳癌の臨床病理学的因子と相関し、治療方針決定の予測因子として応用出来ることを証明した。さらに我々は、③DbPETは空間分解能が高く、その高解像度画像により、腫瘍内部の病態を観察できることに着目した。そして腫瘍内でFDGの不均一集積を示す乳癌が存在することに注目した。腫瘍内で不均一集積を示す乳癌は、腫瘍のER・HER2の発現状況に関わらず、悪性度・増殖能が高いことを予測出来うること証明した。これら①-③は論文化し研究発表を行っている。 造影超音波検査(CEUS)を超音波検査と組み合わせたフローイメージング画像により、TILs病理像との対比および臨床病理学的因子との相関を探索している。そしてTILs陽性乳癌にはある一定のフローイメージング画像を示す特徴があることを解明しつつある。そして特徴のある画像を数値化し定量化による検討を行っている。 本研究はおおむね予定通りであり、今後の研究継続により、DbPET とCEUS を統合した画像診断システムを構築し、腫瘍内不均一性およびTILs診断法の確立に発展させたい。
|
今後の研究の推進方策 |
我々は、DbPETが腫瘍のER・HER2に関わらずFDGの腫瘍内不均一集積を示す乳癌は、悪性度・増殖能が高いことを予測出来うる重要な所見であることを明らかにした。現段階で、DbPETによる不均一な集積は病理学的に線維化・壊死を伴った腫瘍に多く認められることを証明できているが、そのメカニズムは解明できていない。今年度は、DbPETの画像と病理像を対比分析し、不均一像を引き起こすメカニズムを解明する。 超音波検査にCEUSを組み合わせたフローイメージング画像により、TILsの診断に応用出来うるかどうかを分析する。再構成イメージングと4D高解像画像構築が可能な腫瘍内の微細な構造を評価できる新規超音波装置が本年度中に整備できる予定である。超音波検査とCEUSに4 D超音波画像によるvolumeデータを解析することでTILsの分布と密度を数値化し、TILs診断のための定量化を確立する予定である。 さらにDbPETとCEUSを結合し、統合解析することで、腫瘍内の不均一性のメカニズムとTILsのより正確な診断への応用と発展させる。その実現により、正確な治療効果予測への臨床応用に実証出来うると考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
DbPETによる腫瘍内の不均一な集積評価の病理学的検討を免疫染色を含め検討していたが、HE染色で壊死や線維化が観察できた。免疫染色を追加せずに検討できたためである。 今年度予定している壊死や線維化を引き起こすメカニズム検討や4D超音波によるvolumeデータ解析に利用する予定である。
|