研究課題
腫瘍浸潤リンパ球(Tumor-infiltrating lymphocytes:TILs)は、乳癌をはじめとしたがん免疫治療の重要な治療効果および予後予測因子である。同時に腫瘍内不均一性が生じているため、既存の組織学的評価法には限界があり、正確で簡便な診断法の確立が課題である。乳房専用PET(Dedicated breast PET:DbPET)は高解像度画像を得ることが可能である。DbPETと病理像を比較検証した結果、腫瘍の増殖が強い部位と壊死等で腫瘍の少ない部位ではSUVの集積が異なっており、同一腫瘍内で不均一な集積を示す乳がんを確認した。そしてDbPETで不均一なSUV集積を示す乳癌は高い悪性度・増殖能を示すことを証明した(Breast Cancer Res Treat. 2018)。我々はultrasonography(US)でlymphocyte-predominant breast cancer (LPBC:50% stromal TILs以上)に特徴的なultrasonic tissue characterizationがあることに着目した。LPBCはShape(より分葉が多い), Internal echo level (より低い),そしてPosterior echoes (より強い)の3つのultrasonic tissue characterizationが特徴的であることを同定した。3つの因子よりTILs-US scoreを設定した。分析の結果、TILs-US scoreにおけるLPBC予測は優れた診断能を示すことを確証した。(Breast Cancer. 2019)DbPETで腫瘍内不均一性を探索でき、USによる TILs-US scoreを利用することで、正確で簡便なLPBCの術前診断が可能である。
2: おおむね順調に進展している
我々は、これまでの研究により一定の成果を得ている。具体的には下記の成果を得ることが出来た。1. DbPETは高解像度の画像を得ることが可能であり,これまでは困難であった小さな乳がんを同定出来ることを証明した(Clin Imaging. 2018)。 2. DbPETの高解像度画像により術前化学療法の治療効果予測に応用できることを証明した(Eur J Surg Oncol. 2018)。 3. DbPETには不均一な集積があり、この集積像は,乳癌の悪性度や増殖能を予測出来ること証明した(Breast Cancer Res Treat. 2018)。 4. USによる簡便な TILs-US scoreを利用することにより、正確で簡便なLPBCの術前診断が可能であることを証明した(Breast Cancer. 2019)。今後は、微細な血流評価が可能である造影超音波検査(CEUS)を応用し、フローイメージングUS画像と、TILsの病理像の対比および臨床病理学的因子との相関を探索する。これにより乳がんにおけるTILs陽性率を正確に診断出来うるかを検証している。DbPETにおける不均一性予測の精度を数値化しさらなる正確な不均一性の予測に応用する。本研究はおおむね予定通りであり、今後の研究継続により、DbPET とCEUS を統合した画像診断システムを構築し、統合解析によりTILsの正確な画像システムを確立することを検討する。
我々は、DbPETが腫瘍内不均一集積を示すことに着目し、その不均一画像が乳癌の悪性度・増殖能を予測出来ることを明らかにした。そしてDbPETによる不均一な集積は病理学的に集積の強い部位は乳がんの悪性度が高く、一方で集積の弱い部位は線維化・壊死を伴った腫瘍に多く認められることを証明した(Breast Cancer Res Treat. 2018)。しかし、不均一が生じるメカニズムは解明できていない。DbPETの画像と病理像を対比分析し、不均一像を引き起こすメカニズムを解明することが必要と考えている。簡便なUSによりTILs-US scoreを設定し、正確で簡便なLPBCの術前診断が可能であることを証明した(Breast Cancer. 2019)。CEUSを組み合わせたフローイメージング画像により、TILs陽性率を正確に診断出来うるかを検討している。さらに再構成イメージングと4D高解像画像構築が可能な腫瘍内の微細な構造を評価できる新規超音波装置が昨年末に整備された。4D高解像画像を用いたCEUSによりより正確なTILs診断への応用を検討している。最終的にはDbPETとCEUSを統合解析し、腫瘍内不均一性とTILsをより正確な診断への応用と発展させる。そしてこの画像システムを応用し、薬物治療効果予測、およびTILs関連の特異的遺伝子候補の探索に応用させたい。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 6件)
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