研究課題/領域番号 |
17K10553
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
亀井 義明 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (90623702)
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研究分担者 |
中山 寛尚 広島国際大学, 保健医療学部, 講師 (40512132)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 軸索誘導因子 / セマフォリン / 転移 / 乳癌 / 血管新生 |
研究実績の概要 |
本研究では、乳癌に対する軸索誘導因子SEMA3Fの効果を検証し、新たな分子標的としての可能性を明らかにする。 乳癌においてはPI3K/Akt/mTOR経路の活性化がHER2分子標的薬ハーセプチンの耐性化機序に重要であり、SEMA3Fによるこの経路の遮断が効果的であると仮説を立て検討を行っている。 2018年度は、ハーセプチン耐性機序に重要なPTEN欠損細胞の作成に着手した。乳癌細胞MDA-MB-231にPTEN遺伝子を標的とするCRISPRベクターを遺伝子導入した。その後、FACS-sortingによってベクターが導入された細胞(GFP陽性細胞)を確認し、単離培養を行った。その後、ウエスタンブロットによってPTENの欠損を確認した。シークエンス解析を行ったところ、2本の10番染色体上のPTEN遺伝子部位に対して、シトシン、チミン1塩基の挿入がみとめられ、フレームシフトによってストップコドンが生じているのが確認された。この細胞ではAktおよびmTOR下流シグナルS6Kのリン酸化が亢進していたことから、PTEN欠損によるPI3K/Akt/mTOR経路の活性化が認められた。 さらに作成したPTEN欠損細胞を使って、SEMA3Fの効果を検証した。その結果、SEMA3Fは親株乳癌細胞と同様にPTEN欠損乳癌細胞の浸潤を抑制すること、PTEN欠損によって上昇していたAktおよびS6Kのリン酸化を抑制することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度研究においては、PTEN欠損細胞の作成とその評価を行った。乳癌のハーセプチンの耐性化機序に重要とされるPTENを欠損した状況を作成しSEMA3Fの効果を評価した。その結果、PTEN欠損においてもSEMA3Fによる細胞浸潤、Akt-mTORシグナル抑制効果が確認され、我々の目的とするハーセプチンの耐性化克服のための重要なデータが取得できたと考えている。 一方で、乳癌細胞を使った3次元培養や、臨床サンプルを用いるオルガノイド培養系は未だ確立しておらず次年度の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、3次元培養を用いて乳癌に対するSEMA3Fの効果を評価して転移抑制作用の分子メカニズムを明らかにする。低吸着皿を用いてmammosphereを作成し乳癌幹細胞を獲得する。そこにSEMA3Fを処理する、あるいはSEMA3Fを遺伝子導入した株から採取した癌幹細胞を回収して遺伝子解析を行い、転移、細胞接着に関連する分子の変動を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
3次元培養の解析を次年度に移行したため。培養および遺伝子解析に関わる予算を移行した。
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