研究課題
私たちはこれまでの予備実験において、miR-569の標的遺伝子であるTP53INP1の発現低下が乳癌の予後不良因子であることを見出した。この研究により、TP53INP1 の発現を制御するmiR-569 が、ER 陽性乳癌の治療標的となり得るのではないかと考え、本研究を進めた。miR-569に関しては、TaqMan RT-PCR システムを用いて、10 年以上の長期予後と臨床病理学的データが揃っている約600 例の乳癌症例を対象に、乳癌凍結標本からRNA を抽出し、miR-569の標的遺伝子であるTP53INP1遺伝子の mRNA発現と臨床病理学的因子および乳癌治療後の予後との検討を行った。その結果、全症例を対象とした検討において、TP53INP1低発現は独立した予後不良因子であることが示された。また、臨床病理学的因子との関連性をみたところ、TP53INP1低発現は、高い組織学的異型度およびエストロゲン受容体の陰性度と有意な正の相関を示すことがわかった。さらに、術後ホルモン療法を行ったER陽性乳癌のみを対象とした解析においても、TP53INP1低発現は独立した予後不良因子であった。ER陽性乳癌においてTP53INP1発現の低下が組織学的悪性度と相関を認めたため、上皮間葉転換(EMT)に関連するマーカー(SNAI1、SNAI2、vimentin)とTP53INP1発現との関連を検討したが有意な相関は認めなかった。TP53INP1はmiR-569だけでなく、miR-155の制御を受けていることが報告されているため、miR-569およびmiR-155発現と予後との関連を検討したが有意な関連は認めなかった。
すべて 2019
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Jpn J Clin Oncol
巻: 49 ページ: 567-575
10.1093/jjco/hyz029