研究課題/領域番号 |
17K10559
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
柏木 伸一郎 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (80637017)
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研究分担者 |
藤田 寿一 大阪市立大学, 大学院看護学研究科, 准教授 (30212187)
高島 勉 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (80336776)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | トリプルネガティブ乳癌 / 腫瘍微小環境 / Precision medicine / 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
“Precision medicine initiative” に先駆け,乳癌においてはestrogen receptor (ER), progesterone receptor (PgR), human epidermal growth factor receptor 2 (HER2) の発現状況などから治療方法が選択される個別化治療が実践されている.しかしながら,ER, PgR, HER2が陰性であるトリプルネガティブ乳癌 (triple-negative breast cancer, TNBC) では,明らかなターゲットがなく治療法はいまだ確立されていない.申請者らは,TNBCの悪性形質の獲得には,上皮間葉移行 (EMT) や免疫微小環境が関与することを検証し報告してきた.本研究では,EMTを介したTNBCの悪性形質獲得の解明および腫瘍免疫微小環境への関与を検証し,難治性乳癌に対する新たな治療ターゲットを探究する. 申請者らは,本研究のテーマである“TNBCの悪性形質獲得に関わる微小環境制御の臨床的検証”についてEMTや腫瘍免疫,内分泌感受性の側面から探究をすすめ,国内外に発信してきた.そして実臨床への応用可能なTNBCの新たな治療戦略の構築を目的とした基礎研究・臨床研究を推進している.このような横断的な研究アプローチが本研究の特色であり,TNBCに対するCDK4/6阻害剤の有用性を明らかにするなど,独創的な前臨床研究が展開されている. 化学療法前後の標本を使用するなど癌微小環境を動的に捉え,これらに変化を及ぼす癌間質の関与や腫瘍免疫の誘導などを明らかにしていく.本研究により癌微小環境は動的な変化を示し,その分子機構にEMTや免疫環境が関与していることが予想され,その病態に応じた新たなTNBCの治療戦略の構築に期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,申請者らが報告してきた “TNBCの悪性形質獲得に関わる微小環境制御の臨床的検証” について,EMTや腫瘍免疫,内分泌感受性の観点より分子生物学的アプローチをすすめ,実臨床に応用可能なTNBCの治療戦略を明らかにする.申請者らが樹立したEMT抑制モデルやAR発現モデルなどのTNBC細胞株を用いて親株との比較検討をすすめ (TNBC細胞株がluminalタイプに類似した細胞特性に変化する),悪性形質獲得や薬剤効果にかかわる機序を解明する.さらに治療前後の臨床検体を用いて,癌部および間質部における動的な変化を検討する.これらの検証により,TNBCにおけるサブタイプごとの生物学的特性を明らかにし,新たな個別化治療の構築を目指す. EMT抑制モデルはluminalタイプに類似した細胞特性を有していた.またAR強制発現TNBC細胞株 (AR-MDA-MB-231) を作成したところ,AR-MDA-MB-231は内分泌療法やホルモン受容体陽性乳癌に対する新たな分子標的薬として期待されているpalbociclib (CDK4/6阻害剤) に感受性を有しており,これらのTNBCサブタイプに対する新たな治療戦略の可能性を明らかにした.これらの細胞株を用いてメタボロイド解析を行なったところ,EMT抑制モデルやAR-MDA-MB-231はluminalタイプに似た代謝競合を示していた.すなわちTNBCとluminalタイプの乳癌は異なる代謝競合を示し,これらの相違が乳癌の悪性形質獲得に関与している可能性が示唆された. 研究結果については系統だった考察までには至らないが,全体としては今後の研究総括に向けて順調な進捗と思われる. 考察までには至らないが,全体としては今後の研究総括に向けて順調な進捗と思われる.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は今年度の研究結果をもとに,さらに具体的な研究をすすめていく.現在までの研究を継続し,代謝競合と免疫微小環境変化についてのさらなる検証をすすめる.具体的には抗アンドロゲン剤やCDK4/6阻害剤,あるいはEMT抑制作用が報告されている微小管阻害剤 (エリブリン) の修飾による腫瘍微小環境の動的な変化を分子生物学的に明らかにする.これらの腫瘍微小環境の状況を把握することで,TNBCの悪性形質獲得の解明を探究していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度に網羅的解析を行うために次年度に予算を繰り越した.
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