研究実績の概要 |
“Precision medicine initiative”に先駆け,乳癌においてはestrogen receptor(ER), progesterone receptor(PgR), human epidermal growth factor receptor 2(HER2)の発現状況などから治療方法が選択される個別化治療が実践されている.しかしながら,ER, PgR, HER2が陰性であるトリプルネガティブ乳癌(triple-negative breast cancer, TNBC)では,明らかなターゲットがなく治療法はいまだ確立されていない.申請者らは,TNBCの悪性形質の獲得には,上皮間葉移行(EMT)や免疫微小環境が関与することを検証し報告してきた.本研究では,EMTを介したTNBCの悪性形質獲得の解明および腫瘍免疫微小環境への関与を検証し,難治性乳癌に対する新たな治療ターゲットを探究した. 申請者らは,本研究のテーマである“TNBCの悪性形質獲得に関わる微小環境制御の臨床的検証”についてEMTや腫瘍免疫,内分泌感受性の側面から探究をすすめ,国内外に発信した.そして実臨床への応用可能なTNBCの新たな治療戦略の構築を目的とした基礎研究・臨床研究を推進している.このような横断的な研究アプローチが本研究の特色であり,TNBCに対するCDK4/6阻害剤の有用性を明らかにするなど,独創的な前臨床研究が展開されている. 化学療法前後の標本を使用するなど癌微小環境を動的に捉え,これらに変化を及ぼす癌間質の関与や腫瘍免疫の誘導などを検証した.本研究により癌微小環境は動的な変化を示し,その分子機構にEMTや免疫環境が関与していることを明らかにした.
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