研究実績の概要 |
近年、血清中の40~ 150 nmのリン脂質膜を有する膜小胞exosomeが診断・治療の新しいツールとして注目されている。しかしながら、これまで、exosome上の膜蛋白を簡便に測定する方法が確立されておらず、基礎研究および臨床研究においてexosome上の膜蛋白はバイオマーカーとしての期待があるにも関わらず、検討できない状況であった。われわれは、血中exosomeに存在する膜蛋白のEnzyme-Linked ImmunoSorbent Assay(ELISA)による測定法を新たに開発し、特許を出願した(特許2016-158985)。この方法で、現在注目されているexosome 上のさまざまな膜蛋白について臨床での測定が可能となる。本研究では免疫系細胞に抑制的な作用を有するCEACAM1を含むexosomeの体内動態を確認することを目的とした。これまでに、CEA familyであるCEACAM1,CEACAM5,CEACAM6のexosome上の発現をELISAにて測定できるassayを開発し、exosomal CEACAM5は大腸癌の遠隔転移予測に有用であることを確認した。また、血清CEACAM1とexosomal CEACAM1は大腸癌の遠隔転移を伴う病期で上昇することを確認した。PD-1のリガンドであるPD-L1は、血清中に十分な量がなく、Stageとの相関も認めなかった。CEACAM1は担癌状態におけるなんらかの全身状態の悪化を反映している可能性が示唆された。
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