研究課題/領域番号 |
17K10561
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
坂本 隆子 自治医科大学, 医学部, 講師 (80196089)
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研究分担者 |
谷本 圭司 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (90335688)
林 慎一 東北大学, 医学系研究科, 教授 (60144862)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | トリプルネガティブ乳がん / レスベラトロール / エストロゲンレセプター / E-カドヘリン / DNAメチル化 / ヒストン修飾 / エピゲノム / 分化誘導 |
研究実績の概要 |
トリプルネガティブ乳がんは、ホルモン療法や分子標的治療の標的となるエストロゲンレセプター(ER)やHER2の発現がなく、現在のところ有効な治療法は確立していない。本研究では、トリプルネガティブ乳がんの新規治療・予防法開発を目指し、食品成分レスベラトロール(RSV)による分化誘導作用について解明することを目的とした。すなわち、RSVによる細胞分化や関連する遺伝子発現変化と分子メカニズムを検討し、RSVと既存の治療薬との併用効果を明らかにするため、以下の実験を行った。
①RSVを14日間作用させて遺伝子発現を検討したところ、MDA-MB-231細胞のERα及びE-カドヘリンの発現が上昇した。Hs578T-Luc 細胞ではERαの発現が、BT-549-Luc細胞ではE-カドヘリンの発現が上昇した。 ②バイサルファイトシーケンス法によりRSVによるDNAのメチル化の変化を調べたところ、ERαプロモーターA及びB領域のメチル化レベルは、MDA-MB-231細胞では変化はなかった。Hs578T-Luc細胞では、ERαプロモーターA及びB内にメチル化レベルが低下する領域を認めた。E-カドヘリンプロモーター領域のメチル化レベルは、いずれの細胞においても変化はなかった。ChIPアッセイによりRSVによるヒストン修飾の変化を調べたところ、MDA-MB-231細胞のERαプロモーターA領域において、ヒストン3リジン9及び27のアセチル化レベルの上昇がみられた。以上の結果より、RSVは、DNAメチル化やヒストンアセチル化等のエピゲノム制御機構を介し、トリプルネガティブ乳がん細胞のERα mRNA発現を上昇させることが示唆された。 ③MDA-MB-231細胞では、RSVの有無に関わらず、野生型ERαタンパクの発現は確認できなかった。ERαタンパク発現については、今後更に検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3種類のトリプルネガティブ乳がん細胞株を用い、RSVによるERα及びE-カドヘリンmRNAの上昇を確認することができた。エピゲノム解析により、上記遺伝子発現亢進の分子メカニズムの一部が明らかになった。以上のことから、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
①ERαバリアント等のmRNA発現及びタンパク発現について解析する。 ②E-カドヘリンプロモーター領域上の修飾ヒストン、ERα及びE-カドヘリンプロモーター領域上のエピゲノム修飾に関連するタンパク群に対するRSVの作用を検討する。 ③エピゲノム修飾関連酵素の発現及び酵素活性、細胞増殖能、sphere形成能、浸潤・転移能等に対するRSVの作用を明らかにする。 ④ホルモン療法剤やエピゲノム制御に関与する化合物とRSVの併用効果を、上記各種形質について解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
トリプルネガティブ乳がん細胞において、RSVによるERα mRNAの上昇を示すことはできたが、野生型ERタンパクの発現は確認できなかった。その理由として、①検出感度が低い、②タンパク翻訳やタンパク分解制御が影響している、③ERαバリアンドや変異型ERαが発現してきている、等の可能性が考えられる。そこで次年度は、まず上記可能性を確認するための実験を行い、それらが明らかになった後、当初の計画に従って研究を進めていく。次年度の使用計画としては、抗ERα抗体やERバリアントmRNA発現解析のための試薬の購入等に充てる予定である。
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