研究実績の概要 |
本年度は、エストロゲン感受性乳癌細胞株MCF-7を6カ月間の長期にわたり1) 低酸素培養下、2) エストロゲン枯渇下、3) 抗エストロゲン薬(4-OH-tamoxifen [4-OHT], fulvestrant [FUL])曝露下、4) これらの組み合わせ処理下、合計8条件で細胞培養を行なった。培養開始後2カ月毎に、エストロゲン・抗エストロゲン薬に対する増殖反応性(エストラジオールや4-OHT, FULの細胞増殖に与える影響)、ERシグナル伝達経路(ER-α, PgR, TFF-1のmRNA発現量)、CSC比率(CD44/CD24アッセイ、マンモスフェアアッセイ)、CSC制御因子であるヘッジホッグシグナル伝達の関連因子(SHH, Gli1, Gli2)のmRNA発現を経時的に検討した。その結果、すべて条件下で経時的にエストロゲンや抗エストロゲン薬に対する反応性の低下が観察された。しかし、CSC比率の変化は一定の傾向は認められなかった。興味深い所見としては、1) エストロゲン枯渇下処理により樹立された内分泌療法耐性乳癌細胞株と親株を比較したところ、ER-αの発現亢進とエストロゲン非依存的なER-αの活性化(PgR, TFF-1の転写促進)がみられた。2) 抗エストロゲン薬(FUL)曝露下で樹立された内分泌療法耐性乳癌細胞株と親株を比較したところ、ヘッジホッグシグナル伝達の関連因子(SHH, Gli1, Gli2)のmRNA発現の増加が認められた。今後さらに、EMT関連因子やヌードマウス移植能の変化についても検討する予定である。また、次年度は、予定通り内分泌療法耐性乳癌細胞株と親株を比較するmRNA expression microarrayを行い、網羅的に遺伝子発現の変化を検討する予定である。
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