研究課題/領域番号 |
17K10569
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研究機関 | 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所) |
研究代表者 |
高井 健 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 病院 乳腺腫瘍内科, 医長 (80775031)
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研究分担者 |
永井 成勲 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 病院 乳腺腫瘍内科, 副部長 (20458277)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 乳癌幹細胞 / PDXマウスモデル |
研究実績の概要 |
乳癌幹細胞マーカー候補としてLGR5を選択。LGR5(+)細胞は患者乳癌組織における小細胞集団であり、Stage IVの患者の血中で高率に検出され、化学療法抵抗性の可能性を示したため、乳癌幹細胞の特徴を有すると考えられた。 乳癌患者から手術検体を提供いただき、免疫不全マウスに移植し、3 lineのPDXマウス樹立に成功した。LGR5(+)細胞が癌幹細胞であることを証明するために、PDXマウスの腫瘍からLGR5(+)細胞とLGR5(-)細胞をFlow cytometry法にて分離し、それぞれ少数の細胞を別の免疫不全マウスに移植した。その結果、予想と反してLGR5(-)細胞は腫瘍を形成し、しかもLGR5(+)細胞由来の腫瘍よりも増大速度が早かった。さらにLGR5(-)細胞由来の腫瘍にLGR5(+)細胞が出現していた(LGR5(+)細胞由来の腫瘍とLGR5(-)細胞由来の腫瘍では、LGR5(+)細胞の割合はほぼ同じであった)。したがって、PDXマウスの腫瘍を使ってLGR5(+)細胞が癌幹細胞の特徴としての腫瘍形成の起源であるということを証明することはできなかった。 一方でCD44(+)CD24(-)細胞が乳癌幹細胞であると報告されている。そこで、LGR5とCD44の関係をPDXマウスの腫瘍で調べた。その結果、CD44はLGR5に含まれており、LGR5(-)細胞には含まれていなかった。これは、CD44(-)細胞も腫瘍形成能を持つ可能性を示唆しており、既報告とは一致しない可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
乳癌患者の検体(原発腫瘍、血液、転移巣)を用いて検討した結果、LGR5の乳癌幹細胞マーカーの可能性に矛盾がなかった。しかし、in vivoでの腫瘍形成能を調べた結果、LGR5だけでなくCD44も乳癌幹細胞マーカーでない可能性が示唆された。これは癌幹細胞仮説を否定しうる結果である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、癌幹細胞マーカーとして別の遺伝子の選択を検討している。一方で、血中膜型ER(+)細胞の検出が内分泌療法の効果予測や有効性判定に利用できる可能性を見出した。癌幹細胞仮説が否定的と判断した場合、血中膜型ER(+)細胞の解析に集中することを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算はほぼ計画通りに使用しており、マイナスにならないように注意した結果、若干残った。
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