我々は昨年度までに、B16-OVAメラノーマ腫瘍株を皮下移植した担癌マウスモデルを用いて、腫瘍内皮細胞(TEC)がCD8+T細胞に対して腫瘍抗原特異的抗原提示を行うこと、また同時にPD-L1分子を介した腫瘍抗原特異的増殖抑制および細胞傷害性抑制を発揮することを確認した。さらにTECが免疫抑制性CD4+T細胞を誘導すること、誘導されたCD4+T細胞はCD8+T細胞に対し、OVA特異的CD8+T細胞の増殖および細胞傷害性を抑制することを明らかにした。 本年度は同モデルを用いて、さらにメカニズムの解析を行った。TECによる免疫抑制性CD4+T細胞誘導過程においてIL-10およびTGF-bの分泌上昇を認め、これらのサイトカインブロックにより、前述のTECと共培養したCD4+T細胞のCD8+T細胞に対する増殖および細胞傷害性抑制作用がキャンセルされたことにより、TECによるIL-10およびTGF-bを介した抑制性CD4+T細胞誘導作用が示唆された。さらにin vivoでのTECの免疫抑制作用を検証した。TEC特異的にPD-L1を欠損するモデルを作成するため、同系のwildマウスよりPD-L1ノックアウトマウスに骨髄移植を行った。この同系骨髄移植マウスにB16-OVAメラノーマ腫瘍株を皮下移植後、OVA特異的OT-I CD8+T細胞を移入したところ、同系骨髄移植PD-L1ノックアウトマウスでは同系骨髄移植wildマウスに比べ、腫瘍の成長抑制を認めた。さらに同系骨髄移植wildマウスの腫瘍内浸潤T細胞では抗原特異的にアポトーシスが誘導されていたのに対して、同系骨髄移植PD-L1ノックアウトマウスでは腫瘍内浸潤T細胞のアポトーシスが有意に抑制されていた。これらの結果より、TECがvivoモデルにおいても腫瘍特異的T細胞を抑制し、腫瘍成長を促進していることが強く示唆された。
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