研究課題/領域番号 |
17K10575
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
内藤 剛 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (50291258)
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研究分担者 |
井本 博文 東北大学, 大学病院, 助教 (20754922)
田中 直樹 東北大学, 大学病院, 助教 (60547404)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 減量・代謝改善手術 / 十二指腸空腸バイパス術 / 胆汁酸 / プロテオーム解析 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
平成30年度は胆汁酸の輸送タンパクや代謝関連酵素発現変化、消化管ホルモンやその他のメディエーターの発現を測定する予定であった。しかし膜タンパクの解析に難渋し、別の視点からタンパク質の発現状態に関する検討を行った。 DJB術後の代謝改善機序について肝組織のプロテオーム解析にて検討を行った。1372のタンパク質が同定され、発現比率>1.5x・<0.5x、変動係数<30%、有意差あり(p<0.05)でタンパク質を21個に絞り込んだ。この中で、DJB群で発現が亢進していたCarboxylesterase 1d(Ces1d)に着目した。Carboxylesteraseは主に肝や小腸などに発現し、中性脂肪を加水分解するエステラーゼであるが、胆汁酸がtargetとする核内受容体FXRの直接のターゲット遺伝子であることが報告されている。Ces1は主に肝に発現し、中性脂肪を分解し遊離脂肪酸を増やすことで、PPARαの活性を亢進させ、インスリン感受性を改善することが報告されており、Ces1dの亢進がDJB術後の代謝改善に寄与している可能性が示唆された。 膜タンパク特に胆汁酸のトランスポーターに関しては、DJB術後の腸管内の胆汁酸を質量分析装置で解析したところ、Y脚合流部以遠への胆汁酸流出が少なく、BP-limb内で胆汁酸の多くが再吸収されている可能性が示唆された。BP-limb内での胆汁酸吸収経路を明らかにするため、標識胆汁酸と胆汁酸トランスポーター(ASBT及びOATP)阻害薬を用いて、BP-limbにおける胆汁酸吸収能を評価した。その結果、OATP阻害薬で有意に標識胆汁酸吸収が抑制され、ASBT阻害薬で吸収が抑制される傾向が認められた。このことから、BP-limbにおいて胆汁酸はトランスポーターを介して吸収されており、ASBTだけでなくOATPが重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では小腸粘膜、肝組織、血中のタンパクを網羅的に質量分析器を用いてプロテオーム解析する計画であったが、一部タンパクにおいては技術的に困難であり、代謝改善機序の解明に対するアプローチの手法を多少変更したため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き膜画分以外のタンパクにおいてDJBを行うことによる変化を解析していくが、同時にある程度既知のタンパクにターゲットを絞って、その変動を観察していく検討も進めていくこととする。 また最終的な目標は、DJBの糖代謝改善メカニズムの解明であるため、胆汁酸の上昇機序のさらなる追求を行っていく予定である。
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