研究課題/領域番号 |
17K10577
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
本山 悟 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60292372)
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研究分担者 |
佐藤 雄亮 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10431628)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リンパ節転移 / Lenti-CRISPR library / RNA修飾 |
研究実績の概要 |
①マウス口腔由来の扁平上皮癌細胞株(NRS1M1)細胞を、マウス背部へ移植し、転移したリンパ節から分離したがん細胞をさらに次のマウスへ移植、これを繰り返すことで高頻度リンパ節転移モデルを構築した(In vivo passage)。In vivo passageの継代数が進むにつれて腫瘍増殖速度が上昇した。リンパ節転移への影響は現在解析中である。 ②DNAメチル化, ヒストン修飾などエピジェネティクスに加えて, 近年RNA修飾によるepi-transcriptomeが注目されている。最も多く存在するRNAのメチル化であるN6-メチルアデノシン(m6A)に着目し、m6A脱メチル化酵素であるALKBH5やFTOのリンパ節転移に与える影響について調べた。CRISPR-Cas9ゲノム編集によって作製したALKBH5欠損、ヒト食道扁平上皮癌細胞株(TE5, TE9; 8))を用いてin vitro assayを行った。Western Blotによるタンパク発現の変化、RT-qPCRによるRNAレベルでの発現変化、Growth assayやMigration Assay(Transwell chambers (Corning, NY, USA))を行ったが、有意な変化は認めなかった。RNA干渉(siRNA, shRNA)を用いて、上記のin vitro assayを続けた。ヒト食道扁平上皮癌細胞株(TE5, TE9)に対するsiRNA/shRNAによるALKBH5ノックダウンは増殖能を明らかに低下させた。 またEカドヘリン発現をタンパクレベル、RNAレベルともに上昇させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高頻度リンパ節転移モデルを構築した(In vivo passage)。今後はIn vivo passage 0, 1, 2, 3それぞれの細胞株を用いて、網羅的遺伝子発現解析を行い、リンパ節転移促進因子の同定を行う。さらには、この樹立した高頻度リンパ節転移モデルに、Lenti-CRISPR libraryを導入し、in vivo passageを行うことでリンパ節転移抑制因子を同定する。(当初の予定よりやや遅れていると判断) 一方、当初の研究予定にない、CRISPR-Cas9ゲノム編集によって作製したALKBH5欠損、ヒト食道扁平上皮癌細胞株(TE5, TE9; 8))を用いたin vitro assayを行った。近年RNA修飾によるepi-transcriptomeが注目されているため、並行して本研究も実施して行く。(当初の計画以上に進展していると判断) 総合的に、本課題は、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策に関しては以下の通りである。 ①マウス由来の癌細胞を用いた高頻度リンパ節転移モデル(In vivo passage)は完成したが、ヒトTE1細胞株においては移植再現性が確認できなかった。そこで、癌幹細胞(CSC)は自己複製能を持ち、癌の転移巣形成に大きく関わっているため、CSCの特性の1つである、Spheroidを形成した細胞群を作製し、移植を行う予定である。 ②腫瘍増殖能の著しい低下により移植必要細胞数を確保できないため、薬剤誘導性にshALKBH5が発現するベクター(Tet pLKO.1 puro; addgene)を移植可能なヒト食道癌細胞株(OE21またはspheroid形成させたTE1)へ導入する。この薬剤誘導性shALKBH5発現ベクター導入ヒト食道癌細胞株をマウスの背部皮下へ移植し、生着が確認されたところで、誘導薬剤(テトラサイクリンまたはドキシサイクリン)をマウスへ経口投与する。薬剤誘導性にALKBH5発現が抑制され、腫瘍増殖が抑えられるかを確認する。 ③マウス由来の癌細胞を用いた高頻度リンパ節転移モデルで得られたサンプル、In vivo passage 0, 1, 2, 3それぞれの細胞株を用いて、網羅的遺伝子発現解析を行い、リンパ節転移促進因子の同定を行う。さらには、この樹立した高頻度リンパ節転移モデルに、Lenti-CRISPR libraryを導入し、in vivo passageを行うことでリンパ節転移抑制因子を同定する。
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