研究課題
前年度までにマウス口腔由来の扁平上皮癌細胞株を、マウスへ移植し、転移したリンパ節から分離したがん細胞をさらに次のマウスへ移植するIn vivo passageを実践し、またin vivo passageの継代数が進むにつれて腫瘍増殖速度とリンパ節転移頻度が上昇する「高頻度リンパ節転移モデル」を構築した。また、同時にin vitroの継代が進んだ細胞はほとんど転移しないことを確認し、これを「低転移リンパ節転移モデル」とした。以上より、同じ細胞を親株とした「リンパ節高転移モデル細胞」と「リンパ節低転移モデル細胞」を確立するに至った。今年度はこのモデルを用い両者の細胞株からRNAを抽出し、RNA-Seqによる網羅的遺伝子発現解析を行い、リンパ節転移制御候補因子の検索を行った。これで得られた候補因子Xについて術前治療を行っていない食道癌手術検体で作成した組織マイクロアレイを用いて、免疫染色組織化学を行い予後やリンパ節転移の有無について検討した。これまでRNAメチル化のN6-メチルアデノシン(m6A)に着目し、m6A脱メチル化酵素のリンパ節転移に与える影響について詳細な解析を進めてきた。前年度までにm6A脱メチル化酵素はヒト食道扁平上皮癌細胞の増殖を制御すること、細胞周期の解析からG1からS期への進行に不可欠であることを証明してきた。今年度はRNA-Seqによる m6A脱メチル化酵素ノックダウン細胞の遺伝子発現解析により、m6A脱メチル化酵素の標的遺伝子候補Yを同定した。またm6A-RIP-qPCRによってm6A脱メチル化酵素が候補因子YのRNAのm6Aを脱メチル化することで同RNAを不安定化させ細胞周期が促進することで、ヒト食道扁平上皮癌細胞の増殖を制御していることを証明した。
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