研究課題
本研究の目的は、胃癌におけるBRCA1/2遺伝子異常とDNA二本鎖修復機構関連タンパク質発現状況、およびPARP阻害剤やプラチナ系抗癌剤の治療効果との関係を明らかにすること、および、胃癌におけるDNA二本鎖修復機構の異常に着目した個別化治療発展の科学的基盤を確立することである。平成30年度は、胃癌患者において腫瘍にBRCA1/2変異がある7症例を詳細に解析すると、3症例にBRCA1/2の病的な胚細胞性変異が同定された。これらの症例では胃癌の家族歴や他臓器癌を有することを確認した。BRCA1/2変異は家族性胃癌の素因となる可能性があり、BRCA1/2遺伝子検査は、癌のサーベイランスと治療法の選択に役立ち得ると結論し、JCO Precision Oncology誌に紙上発表した。また、切除不能進行再発胃癌27例のうち、DNA二本鎖修復機構のうち相同組み換え修復に関わる遺伝子(BRCA1, BRCA2, PALB2, RAD50, FANCD2)の異常(HR破綻)を認めたものは6例であり、この6例ではプラチナ系抗癌剤(Cisplatin、Oxaliplatin)の奏効率および病勢制御率が有意に高く、生存期間中央値も長いことを確認し、第73回日本消化器外科学会総会で発表した。さらに胃癌術後症例130例に対しても相同組み換え修復に関わる遺伝子異常(HR破綻)を検索したところ、31例にHR破綻を認め、特に癌遺残再発症例において、HR破綻は良好な予後と関連があることを確認し、第26回日本消化器関連学会週間JDDW2018で発表した。
2: おおむね順調に進展している
臨床的に胃癌におけるBRCA1/2遺伝子異常とDNA二本鎖修復機構関連タンパク質発現状況、およびPARP阻害剤やプラチナ系抗癌剤の治療効果との関係を明らかにした。それらを紙上発表および国際学会で発表した。
今後はタンパク質発現異常の頻度が高い遺伝子を対象として、胃癌細胞株におけるタンパク質発現をwestern blottingにて評価する。タンパク質発現の高い胃癌細胞株を対象に、shRNAを導入したノックダウン細胞株を樹立する。令和元年度は、遺伝子発現を調節した細胞株と未処理の細胞株に対するPARP阻害剤やプラチナ系抗癌剤の細胞増殖抑制効果を、細胞増殖アッセイを用いて評価する。
細胞実験がやや遅れたために余剰が生じた。令和元年度の細胞増殖アッセイを用いた実験に使用する見込みである。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
JCO precision oncology
巻: 5 ページ: 1-8
10.1200/JCO.2018.36.15_suppl.e13618