研究課題/領域番号 |
17K10585
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
出口 靖記 京都大学, 医学研究科, 医員 (50795581)
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研究分担者 |
久森 重夫 京都大学, 医学研究科, 助教 (50534351)
小濱 和貴 京都大学, 医学研究科, 准教授 (50322649)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | HER2 / 胃癌 / 食道腺癌 / Trastuzumab / PTEN欠失 / BEZ235 |
研究実績の概要 |
【今年度の研究成果】PTENノックダウン細胞株を用いて、Trastuzumab(以後Tmab)感受性回復に関する検証を行った。PTENノックダウン細胞株はTmab感受性の低下をきたすが、これに対してPI3K経路阻害薬のBEZ235をTmabと併用投与することにより、PI3K経路・MAPK経路ともに活性化が抑制され、増殖抑制効果を示した。 【研究を通して得られた成果】 1.胃癌・食道腺癌患者の臨床検体を用いて多施設共同・後ろ向き観察研究を行った。進行再発HER2陽性胃癌・食道腺癌に対してTmab療法を受けた症例を対象とし、臨床情報および病理検体を収集した。PTENの免疫組織染色によりPTEN欠失群とPTEN陽性群に分類し、各種患者背景因子を含めて多変量解析を行った。PFS中央値、OS中央値ともにPTEN欠失群でPTEN陽性群より有意に短く、PTEN欠失はTmab療法の有意な効果予測因子であり、かつ有意な予後不良因子であった。 2.HER2強発現している胃癌・食道腺癌細胞株は、PTENノックダウンによりPI3K経路とMAPK経路の両方が活性化されることでTmab感受性の低下をきたす。これに対して、BEZ235をTmabと併用投与することにより、PI3K経路・MAPK経路ともに活性化が抑制され、増殖抑制効果が得られた。この結果から、HER2陽性PTEN欠失胃癌・食道腺癌に対して、Tmab+BEZ235の併用投与が治療選択肢の一つになる可能性が示唆された。 本研究の結果から、PTEN欠失は単に治療除外のためのバイオマーカーとしてではなく、併用療法などの個別化治療のためのバイオマーカーとして活用できる可能性がある。それにより、Tmab療法で効果が得られなかった患者の治療選択肢が広がり、HER2陽性胃癌・食道腺癌患者の治療成績向上につながることが期待できる。
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