研究課題
気管浸潤をきたしたT4食道癌に対する気管合併切除に対する有用性について検討を行い、3年生存率36%と長期予後を望める結果を報告した (Disease of Esophagus 2020)。本報告では気管切除後に永久気管孔を造設しており、発声機能の消失を余儀なくされ、術後のQOLの著しい低下は否めない。気管の再建を伴う手術が可能となれば極めて臨床的意義の大きな治療法となる。本研究では、これまで脂肪由来幹細胞による軟骨細胞への分化誘導を行ってきたが、軟骨細胞への分化の誘導は可能であり、器質の産生も確認できたが、増殖能が悪いため、食道癌の治療経過中にこれら培養細胞のみを用いた組織のみでの気管再生は困難であった。次に自己由来の軟骨組織を用いた再建を行った。大型動物における耳介軟骨での気管被覆では、気道の密閉性、耐圧性、安全性、ともに十分応用可能であるとの結果を得た。一方、自己組織における被覆は大きさや形に制限があるため、全ての症例で臨床応用できるとは限らず、現時点では2例の臨床応用にとどまっている。生体適合性の吸収素材による気管再建も本研究において同時並行で進めている。現在Mgを中心とする金属素材での再建にむけた実験を進めている。Mgの組織への吸収速度の調整(水素ガスの発生速度や発生方向など)により生体組織への炎症を制御していく素材の修飾や形状の工夫などを行い、大型動物においても気管環状切除に対する気道確保の代替としての安全性の確認を行っている。現在、短期的には気密性・耐圧性に問題なく気道確保できることが確認された。
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Disease of Esophagus
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10.1093/dote/doz101