研究課題/領域番号 |
17K10589
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
西崎 正彦 岡山大学, 大学病院, 講師 (30379789)
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研究分担者 |
田澤 大 岡山大学, 大学病院, 准教授 (90415513)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 消化器癌 / 転移 / 蛍光イメージング / 抗転移薬剤 |
研究実績の概要 |
消化器癌患者は、再発や転移によって難治性となり、予後不良な経過を辿る。しかし、再発や転移を起こすメカニズムは未だ不明であり、抗転移薬剤の開発の成功には至っていない。申請者は、これまで癌特異的蛍光発現ウイルスを用いた癌細胞選択的な蛍光イメージング技術の開発を行ってきた。本研究では、消化器癌の悪性化蛍光イメージング技術を開発し、悪性化に寄与する微小環境とその分子メカニズムを解明し、抗転移薬剤の候補を同定してその治療効果を検証する事を目的とした。
平成29年度は、2種類のヒト大腸癌細胞株(HCT116、RKO)に間葉系マーカー遺伝子ビメンチンのプロモーター制御下に赤色蛍光タンパク質(RFP)を誘導するEMT可視化プローブを導入し、限界希釈法によるクローン化を行った。EMT可視化プローブを導入したHCT116細胞とRKO細胞に炎症性微小環境に関連する様々な炎症性サイトカインや増殖因子を処理してRFP発現と形態変化を共焦点レーザー顕微鏡で経時的に観察したところ、TNF-alphaとIL-1betaがRFP発現や遊走能の増加と細胞間接着の低下を誘導した。さらに、ウェスタンブロット法にて炎症性サイトカインによるRFP誘導が上皮系マーカー(E-カドヘリン、サイトケラチン)の低下や間葉系マーカー(alpha-SMA)の増加と一致する事を確認し、RFP発現とEMTの関連性が示唆された。次に、RFP発現の可逆性を明らかにするために、HCT116細胞とRKO細胞を炎症性サイトカインで48時間処理してEMTを誘導した後に炎症性サイトカインを除去してRFP発現と形態変化を共焦点レーザー顕微鏡で経時的に観察したところ、RFP発現の低下とともに遊走能の低下や細胞間接着の増加を認めた。さらに、ウェスタンブロット法にてRFP発現の低下とともに上皮系マーカーの増加や間葉系マーカーの低下を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、2種類のヒト大腸癌細胞株を用いて間葉系マーカー遺伝子ビメンチンのプロモーター制御下にRFPを誘導するEMT可視化プローブを導入した細胞株のクローンを樹立した。炎症性微小環境に関連する様々なサイトカインや増殖因子を処理したところ、TNF-alphaとIL-1betaがRFP発現の誘導とともにEMTを誘導する事を確認した。さらに、炎症性サイトカインの除去によってMETの誘導とともにRFP発現の低下も確認した。今後、EMT可視化プローブを導入したヒト大腸癌細胞株と炎症性正常細胞を共培養した場合にRFP発現やEMT誘導の確認が可能となり、計画はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、EMT可視化プローブを導入した2種類のヒト大腸癌細胞株(HCT116、RKO)を用いて、生体内の炎症性微小環境を想定したマクロファージや線維芽細胞と共培養した場合のRFP発現や形態変化を共焦点レーザー顕微鏡で観察する。さらに、共培養における炎症性サイトカインの関与を明らかにするために、抗サイトカイン中和抗体を添加した場合のRFP誘導やEMT誘導に対する抑制効果を観察する。一方、EMT阻害剤のスクリーニング系を開発するために、96ウェルプレートを用いてHCT116細胞やRKO細胞にEMT誘導するための最適な細胞数、培養時間、炎症性サイトカインの処理時間を検討する。EMT誘導の最適化は蛍光顕微鏡やマイクロプレートリーダーによるRFP蛍光強度の検出によって定量的に評価する
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 炎症性微小環境によるEMT誘導をウェスタンブロット法で確認するために様々な種類の抗体の購入を想定していたが、予定よりも少ない種類の抗体での検討が可能となったため。 (使用計画) 炎症性細胞との共培養によってEMTを誘導した際のサイトカインの関与を確認するために、関連する中和抗体の購入に繰り越した研究費を使用する。
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