近年の次世代シークエンサー(NGS)を用いた研究の発展により、マイクロRNA(miR)の生成過程で成熟型miRから末端側の数塩基の付加、欠失を認めるアイソフォームであるアイソミア(isomiR)の存在が明らかとなった。isomiRは成熟型miRと同様にエクソソームに内包され安定して血管内を循環する。NGSによって検出されたmiRとisomiRの組み合わせは強力な癌バイオマーカーとなる可能性がある。 当院で治療を行った食道扁平上皮癌患者(ESCC、n=48)と健常者(HC、n=42)より採取した血清のmiR/isomiRの発現を調査した。これらの症例を2つのグループに分け、90%以上で検出可能であり、平均リード数が優位に2倍以上異なるものを診断バイオマーカーと定義し、両グループ間で再現性を確認した。その結果、多変量線形回帰解析にて1つの成熟したmiRと2つのisomiRが抽出された。これらを用いた診断パネルによるインデックスはHC例に比べてESCC症例にて有意に高値であった(13.3±8.9対3.1±1.3、p <0.001)。また、パネルインデックスは食道腺癌(6.2±4.5)や高度異型性(4.2±1.7)の症例で、ESCC群と比較して有意に低く、この診断パネルはESCC診断に高い精度を持ち、新しいバイオマーカーとして機能すると考えられた。 (現段階ではmiR/isomiRの名称は匿名としている。)
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