研究実績の概要 |
【目的】胃癌患者において、循環血液中(末梢血、骨髄血)のPD-L1, PD-1, CD8の発現量がバイオマーカーになり得るかを検討する。【対象】胃癌切除例246例、健常人23例。【方法】術前末梢血、骨髄血中のPD-L1、PD-1、CD8遺伝子のmRNA発現を定量RT-PCR法にて測定した。【結果】(1) 背景因子:平均年齢 62.1±12.8歳(24歳-87歳)、男性/女性 158/88例。(2) 健常人との比較(末梢血):胃癌患者ではPD-L1、PD-1、CD8発現がそれぞれ2.8、4.0、3.1倍と有意に高値であった(PD-L1: P<0.05、PD-1: P<0.001、CD8: P<0.001)。(3) 臨床病理学的因子: (末梢血) PD-L1高発現群は、壁深達度が高度で(P<0.05)、stageが進行していた(P<0.05)。CD8低発現群は、腹膜播種を多く認めた(P<0.05) 。(骨髄血)PD-1低発現群は、壁深達度が高度で(P<0.05)、stageが進行していた(P<0.01)。(4) 予後: (末梢血) PD-1、CD8低発現群は、それぞれ高発現群と比較し、有意に予後不良であり(PD-1: P<0.01、CD8: P<0.05)、PD-1高/低発現による予後の差は、stageが進行するほど大きかった。(骨髄血)PD-L1, PD-1, CD8発現と予後に有意な相関を認めなかった。(5) 多変量解析: (末梢血) 腫瘍径、深達度、腹膜播種、PD-1低発現が、全生存率の独立予後不良因子であった(PD-1低発現: HR 2.67, 95%CI 1.10-7.15, P<0.05)。(骨髄血) PD-L1, PD-1, CD8発現は有意な独立予後因子ではなかった。以上より、PD-1は末梢血液中において、術前末梢血中のPD-1低発現は独立予後不良因子であった。
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