研究課題/領域番号 |
17K10594
|
研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
能城 浩和 佐賀大学, 医学部, 教授 (90301340)
|
研究分担者 |
北島 吉彦 佐賀大学, 医学部, 客員研究員 (30234256)
田中 智和 佐賀大学, 医学部, 助教 (60781903)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | HIF-1α / 脂肪酸合成 / YC-1 / パルミチン酸 / カルニチン |
研究実績の概要 |
低酸素環境においてβ酸化は抑制されており、脂肪酸合成→lipogenesisへと代謝変容することが知られている。近年、低酸素環境ではHIF-1αによる脂肪酸β酸化の直接的抑制効果が報告されている。低酸素下癌細胞における脂肪酸β酸化の抑制は「癌のWarburg効果」と同様、電子伝達系で産生される過剰ROSを抑える低酸素環境適応反応であり、HIF-1αはその中心的因子と推測した。以上より、我々はHIF-1α発現が抑制されることで低酸素下胃癌細胞に脂肪酸β酸化が強制作動される結果、過剰ROS産生を惹起し、アポトーシスを誘導するという治療仮説を想定した。さらに脂肪酸(パルミチン酸: PA)および進行癌患者での不足が報告されている低分子カルニチンを付加することで低酸素下アポトーシスをさらに増強できると推測した。
2種類の胃癌細胞株(58As9、MKN74)を用いてHIF-1α-ノックダウン(KD)細胞株を作製。KD細胞株では低酸素環境でcell viabilityが低下することが確認された(trypan blue法)。その際、過剰にROSが産生(FACSおよびconfocal microscopy)し、アポトーシスが誘導されていること(Western blot)が確認された。また、HIF-1α阻害剤であるYC-1を使用した場合も、KD細胞株と同様の実験結果が得られた。
さらに前述の仮説に基づき、PA+カルニチン付加によるアポトーシス増強効果について解析を行った。PBS、YC-1単独、YC-1 plus PA+カルニチンを常・低酸素下で添加し、cell viabilityを解析したところ、YC-1 plus PA+カルニチンがYC-1単独に比し、低酸素特異的な増殖抑制効果を増強する傾向にあった。現在、PAおよびL-カルニチン濃度を複数設定し、至適有効濃度を決定しているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vitroの実験系の遂行により、着実に実験データが積み重ねられている。また、概ね仮説に矛盾しない実験結果が得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
使用するPAおよびL-カルニチン濃度を複数設定し、現在、至適有効濃度を決定しているところである。また、PA+カルニチン併用による脂肪酸代謝変容を立証するため、細胞内アセチルCoAおよびアシルCoA濃度を測定する。具体的には、アセチルCoA定量は測定キットを使用し、アシルCoA定量は既報に従い、試料中のアシルCoAをアシルCoAオキシダーゼで酸化し、産生されたH2O2をペルオキシダーゼと作用させて比色法で定量する。最終的にアシルCoA/アセチルCoA比を算出することで低酸素下58As9、MKN74へのYC-1 plus PA+カルニチン併用投与が脂肪酸(PA)→アシルCoA→アセチルCoA→脂肪酸β酸化カスケードを直接活性化することを立証する。また、脂肪酸β酸化促進に寄与する遺伝子群(ACS、CPT1、CPT2、CAD)の発現・機能解析を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度に実施予定であった外注実験および国際学会での発表を次年度に延期したため、これらを次年度の当初の研究計画に加える。
|