研究課題
本研究の目的は、グローバルかつ膨大な消化器癌データベースを用い、消化器癌におけるCCN(Cyr61:cysteine-rich 61、CTGF:connective tissue growth factor、Nov:nephroblastoma overexpressed)familyの発現意義を解明し、新規治療法開発に寄与する事である。間質増殖因子CCN familyは4つの特徴的なモジュールを有し、様々な細胞外シグナルを制御するタンパク質ファミリーであり、Signal conductorとも呼ばれる。まず臨床データを用い、消化器癌におけるCCN familyの発現意義を検討した。食道癌切除例の臨床データを最新にアップデートし、食道癌癌部におけるCCN4の発現レベルを免疫染色により評価し、CCN4の発現意義を検討した。CCN4高発現群はhigh-pT(P=0.007)、cM(P=0.02)、high-pStage(P=0.03)と有意に相関し、陽性リンパ節個数とは正の相関の傾向を認めた(P=0.08)。消化器癌の臨床において、FDG-PETは非常に有用である。FDGの構造はグルコースと類似しており、体内ではグルコースと同じような動態を示すことから、悪性腫瘍などの糖代謝が亢進した細胞に集積し、画像化することができる。つまり、FDG-PETはがん代謝を利用した検査機器であり、SUVmaxはがん代謝の指標とも言える。食道癌において、CCN4の発現レベルをSUV値と比較解析したが、有意な相関を認めなかった(P=0.28)。食道癌診断前のライフスタイルに関しても解析を行った。CCN4は喫煙と関連は認めなかったが(P=0.95)、飲酒歴ありと正の相関の傾向を認めた(P=0.10)。予後解析では、全生存期間、癌特異的生存期間、無再発生存期間の全てにおいて、CCN4高発現群が有意に不良である事が明らかになった(P=0.03、P=0.02、P=0.02)。
2: おおむね順調に進展している
詳細な臨床データ及びライフスタイルを含むデータベースのアップデートを順調に終了する事ができた。CCN familyの中でCCN4に着目し検討した結果、CCN4の発現レベルがhigh-pT、cM、high-pStageと有意に相関する事を明らかにした。また、これまで検討されることのなかった発癌前のライフスタイルと検討した結果、CCN4発現レベルが飲酒と相関する可能性が示唆された。しかし、喫煙とは関連は見なかった。これはCCN4高発現の癌発生に飲酒が関与している可能性があることをサポートするデータになりうる。予後に関しては、全生存期間、癌特異的生存期間、無再発生存期間の全てで、CCN4高発現群が有意に予後不良である事が明らかになった。
今回、CCN familyの中でCCN4が食道癌の癌進展に寄与する可能性がある事を示した。今後は癌進展機序を解明すべく、様々な分子病理学的因子、腫瘍免疫、マイクロバイオームとの関連を解析する。有意な所見が得られた場合、in vitroなどの基礎実験で立証を行う。
試薬、消耗品については、医局内保管のものを使用することができた。試薬、消耗品の購入費、及び、研究データの管理、資料整理を行ってもらうための事務補佐員の雇用経費に充てたい。また、最新の研究情報を得るため、及び研究成果発表のための学会出張旅費にも充てたいと考える。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (2件)
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