研究課題
胃癌、大腸癌など消化管癌に対して使用される、TrastuzumabやCetuximabといったモノクローナル抗体両方の重要な作用機序として、抗体依存性細胞障害(ADCC)がある。ADCCは、標的細胞である癌細胞の表面抗原に結合した抗体のFc部位が、NK細胞などの免疫担当細胞のFc受容体と結合することで、抗体依存的に誘導される細胞障害活性であり、獲得免疫後の細胞性免疫機構の1つとして知られている。ADCCを介する抗体製剤の開発がすすみ、有効な治療効果を認めるようになってきたものの、無効例、耐性例の出現もありADCCのさらなる増強のための工夫が急務である。抗体糖鎖のフコース含量とADCC活性に負の相関があることが報告されており、脱フコシル化抗体が開発され注目を集めている。本研究はHER1陽性、HER2陽性胃癌細胞株を対象として、通常型抗体および脱フコシル化抗体を用いてADCC活性の解析を行い、その意義を検討するものである。全血から末梢血単核球(PBMC)を分離し、MKN7およびMKN28胃癌細胞株を標的細胞としてPBMCと抗体投与、非投与下にADCC Assayを行い検討を進めている。抗HER1抗体、抗HER2抗体ともに、脱フコシル化抗体投与下での細胞障害活性は通常型抗体と比較し、有意なADCC増強効果が示唆された。脱フコシル化抗体のADCC増強作用から、今後臨床応用が期待されるが、さらに、癌患者のPBMCを用いた検討の追加や、ADCC抑制機序の解除などの基礎的検討、臨床的検討を行う。
2: おおむね順調に進展している
in vitroでのADCC測定系が当研究室内で確立し、脱フコシル化抗体の有用性が示されつつある。ある程度実験計画に沿って進捗していると言える。
in vitroのデータの信頼性、再現性を高め、症例数を拡充する。臨床データとの関連についても検討を進める。
本研究での解析は癌細胞株および血液検体が主となるものであるが、それら手技はすでに当研究室でほぼ確立されていたこと、消耗品や種々の物品・設備、細胞株なども研究室内に揃っていたことから、当初の想定より新規の物品費がかからず、次年度使用額が生じることとなった。次年度使用額は主に実験関連の消耗品を主体とした物品費として使用する予定である。
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