研究課題
平成30年度は、TRPV2が高発現することを既に確認済みである、ヒト食道癌細胞株:TE15、KYSE170を用いて、TRPV2 siRNAのトランスフェクションを行い、細胞増殖抑制効果・アポトーシス増強効果、細胞遊走・浸潤能抑制効果を確認した。また、TRPV2のノックダウンにより、EMT関連蛋白であるSnailの低下と、Apoptosis関連蛋白であるCleaved Caspase3の増加が確認された。更に、TRPV2 siRNAを導入したTE15細胞株の遺伝子発現変化をmicroarrayにより網羅的に解析した。Ingenuity Pathway Analysisの結果では、Wnt/β-カテニンシグナル伝達系に遺伝子発現変化を認めた。現在、TRPV2とWnt pathwayの相互作用機序を解明するため、更なる関連遺伝子発現解析を進めている。また、食道扁平上皮癌細胞株TE4、TE8、膵癌細胞株PK59から癌幹細胞を抽出・培養することに成功し、その遺伝子発現変化をmicroarrayにより網羅的に解析した。何れの癌幹細胞株においてもTRPV2の高発現が確認された。また、TE-4、TE-8由来癌幹細胞株に共通して、ATP2A1、ATP2A3、ORAI3などの、他のカルシウムイオンチャネルやトランスポーターが高発現することを見出し、現在、癌幹細胞とカルシウムイオン輸送に関する更なる機能解析を進めている。一方で、食道癌・胃癌におけるSodium iodide symporter (Gastric Cancer. 2019)、Anion exchanger 2 (Oncotarget. 2018)、Chloride intracellular channel 1 (Oncotarget. 2018)、Aquaporin 1 (Oncotarget. 2018)などのイオン輸送体・pH制御因子・水輸送体の機能解析・臨床病理学的意義を解明した。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画のうち、ヒト食道癌組織におけるTRPV2の発現解析、癌細胞におけるTRPV2を介する細胞周期・アポトーシス・細胞浸潤制御機構の解明、Wnt/β-カテニンシグナル伝達系の関与の解明、癌細胞株TE4、TE8からの癌幹細胞抽出・培養と、共通し発現変化する遺伝子の解析は、ほぼ終了している。また、消化器癌における種々のイオン輸送体・pH制御因子の機能解析も進展しており、研究成果は既に国内外の学会で発表し、英文雑誌にも投稿・掲載されている。現在、TRPV2とWnt pathwayの相互作用機序を解明するたの、更なる関連遺伝子発現解析も進行しており、研究目的・研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
次年度以降は、術前化学療法施行症例を中心に食道組織内TRPV2・癌幹細胞マーカー発現を同様に解析し、化学療法の組織学的効果との相関について検討する。また、TE-4、TE-8由来癌幹細胞株に共通して高発現していることが明らかとなった、ATP2A1, ATP2A3, ORAI3などのカルシウムイオンチャネルやトランスポーターについても、研究を進める。更に、各種抗癌剤(5FU、シスプラチン、ドセタキセル)による抗腫瘍効果が、TRPV2阻害剤トラニラストの併用により増強されるか否かを解析する。また、in vivoにおけるTRPV2制御による皮下腫瘍成長抑制効果、及び抗癌剤併用効果について検討する予定である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (9件)
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