研究課題/領域番号 |
17K10603
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
尾島 敏康 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (60448785)
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研究分担者 |
中森 幹人 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (10322372)
中村 公紀 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (80364090)
山上 裕機 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20191190)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 樹状細胞 / がんワクチン / アデノウイルスベクター / 腫瘍抗原 |
研究実績の概要 |
平成29年度は担癌患者iPS-TAA-DCを用いたin vitro抗腫瘍効果を行った。 ヒト腫瘍抗原遺伝子を恒常発現するiPS細胞由来DCの癌ワクチン療法の可能性を,担癌患者のPBMCから樹立したiPS細胞由来DCを用いたin vitroでの抗腫瘍効果を確認した.本研究はiPS-DC癌ワクチン療法の臨床応用に向けてのpreclinical studyであり,当大学倫理委員会の承認を得てから行った (approval number 1594) (UMIN:000021105).6例の大腸がん患者をエントリーして行った. 担癌患者からの癌細胞採取とcell line化:6例の進行大腸癌患者の検体から得た癌細胞を,CTOS法を用いてセルライン化した.免疫染色,flow cytometry を用いてTAAの発現を確認した.担癌患者PBMCからのiPS細胞の樹立とiPS細胞へのヒト腫瘍抗原 (TAA) 遺伝子の導入:Feeder freeでのiPS細胞樹立,維持培養を京都大学iPS細胞研究センター(CiRA) protocolに沿って行う行った.導入候補TAA遺伝子はCEA,WT1遺伝子であった.アデノウイルスベクターを用いて, iPS細胞に導入した.その後,各TAA発現iPS細胞をNeomycinにて選択培養し,ヒトTAA遺伝子を恒常的に発現するiPS細胞株を樹立した.TAA恒常発現iPS細胞からDCへの分化誘導:5 step培養法を用いて行った.maturationを行った後に,iPS-TAA-DCの表面マーカー,成熟能の確認をflow cytometry, IL-12 ELISA,IFN-γ ELISAで確認した.現在iPS-TAA-DC in vitro刺激で得られたCTLのTAA特異的細胞傷害活性の解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は担癌患者iPS-TAA-DCを用いたin vitro抗腫瘍効果を行った。当初20例の担癌患者エントリーを目指していたが、患者由来の癌細胞のセルライン化に当初は難渋し、時間を要した。癌性腹水や胸水のセルライン化を行っていたが、長期培養に適さず、固形腫瘍を用いたCTOS法へと手技を変更したところ、セルライン化が可能となった.その後は、担癌患者からのiPS細胞の樹立、樹状細胞への分化誘導などは計画通りに進んだ.これまでの5 step法をより効果的にするため、サイトカインカクテルの内容を改良しnew 5 step法を確立し、現在に至っている.CTOSで得られたセルラインは主にCEA WT1を発現していたため、2種のアデノウイルスベクターを調整し、研究に用いた. 6例の担癌患者由来のiPS-DCにターゲットTAA遺伝子を導入し、in vitroでのCTLを誘導し、6例ともCTLが誘導され、その腫瘍効果を確認した.現在裏付けとして、テトラマー陽性細胞の検出を行っている. 上記のごとく、おおむね順調に研究は進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に研究にあたり、2点大きな変更点 改良点を要した.ひとつは担癌患者からの癌細胞セルライン化であるが、現在のCTOS法に変更することで安定したライン化が可能となった.またiPS細胞から樹状細胞への分化誘導であるが、サイトカインカクテル内容の変更するなど、modifyすることで改良を加え、new 5step法を確立した. 今年度も引き続き、担癌患者からの癌細胞セルライン化 iPS-DCの樹立 in vitro CTL誘導を行っていく予定だが、現在までに大腸癌患者でのみ成功しており、今後の課題としては、胃癌や膵癌の患者からの樹立を成功させる点である.胃癌膵癌との腫瘍細胞以外の繊維芽細胞が多く存在しており、CTOSでの癌細胞単離化が困難である点が課題である.対応策としては、繊維芽細胞除去シートを用いたCTOS法の改良や、腹水からの樹立を考えている. 上記の担癌患者を用いた研究と並行して、可溶性TGF-beta受容体遺伝子導入マウスiPS細胞由来DCを用いた抗腫瘍効果の基礎研究を推進していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度末の論文登載料の使用計画にずれ(年度末にアクセプトしたため,支払いが新年度になってしまった).33334円が次年度繰り越しになってしまいました。
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