研究実績の概要 |
食道癌に最適な抗がんウイルス製剤を開発する目的で、当該年度は、前年度と前々年度の研究経過と結果を基に、最終年度の研究を行った。 まず、研究当初の予想では、食道癌細胞または食道癌組織におけるsurvivinまたは、survivin promoterの発現強度は高いと考えていたが、ヒト食道癌細胞株の検討では、発現を認めたものの、食道癌手術切除標本を用いた解析では、予想以上にその活性が低かったために、研究の主たる目的を達成することは困難と考え、研究目的の中での主たる解析を若干変更した。 まず、研究代表者がすでに開発していた (1)ウイルス複製能増強型抗がんウイルス(呼称:T-SOCS-3)と癌細胞のテロメラーゼ活性を応用した抗がんウイルス(呼称:T-hTERT)の2種類を用いて、食道癌細胞株あるいは食道癌手術切除標本に対する殺細胞効果を検証した。 その結果、T-SOCS-3は食道癌細胞株と食道癌手術切除標本におけるウイルス感染後の複製能の増強と殺細胞効果を認めた。さらに、T-hTERTに関しても同様に、食道癌細胞株だけではなく食道癌切除新鮮組織ともに顕著な治療効果を確認出来た。特に、T-hTERTの開発コンセプトである癌組織のテロメラーゼ活性が、食道癌手術症例の臨床病理学的結果と相関していることが判明した。 また、ヌードマウスを用いた食道癌担癌モデルにおけるT-SOCS-3, T-TERTの抗腫瘍効果効果は腫瘍組織内の間質量とも関連があることを見いだした。これらの結果は、本研究課題の当初の目的達成には至らなかったが、新しい知見が得られたという点において、意義があると考える。
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