研究課題/領域番号 |
17K10605
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
岩谷 岳 岩手医科大学, 医学部, 講師 (70405801)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 食道癌 / 変異 / 血漿DNA / Circulating tumor DNA / デジタルPCR |
研究実績の概要 |
本研究課題では食道扁平上皮癌を対象に、独自デザインによる遺伝子パネルを用いた次世代シークエンサーによる変異スクリーニングを行い、高い変異アリル頻度 (VAF)を有する症例特異的変異についてdigital PCRによる癌細胞由来の血漿中遊離DNA (Circulating tumor DNA: ctDNA)をモニタリングするシステムの構築を目標としている。これまでに60症例が登録され順調に症例集積、治療経過中の血漿サンプルを集積しており、研究は順調に経過している。36例までの解析で原発巣変異解析では平均4.2個の遺伝子変異が検出された (VAF>5%)。症例特異的変異を標的とするPrimer/Probeを独自にデザインし、すでに60変異に対するPrimer/Probeを作成し、原発巣DNAを用いた動作確認を行った。これらのProbeを用いたctDNAモニタリングシステムは、Stage IA表在癌ではctDNAは検出されなかったが、tumor volumeが3.8cm3以上、Stage IB以上ではctDNA陽性であった。化学療法の正確な効果判定、治療後の遺残腫瘍の存在の推定、3-6か月早い再発診断、予後予測に有用である可能性を示した。治療後早期にctDNAが陰性化する症例は、陽性持続例に比較し有意に予後良好であった。食道癌では本システムにより、intensiveなctDNAモニタリングが予後、治療効果予測に役立つことが示唆された、follow中にctDNAが陽性となった症例で、早期にPET検査などの画像検査や補助療法などの介入により予後を改善しうるか、ctDNA検査の介入を評価する研究を次の課題と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
食道扁平上皮癌36例までの結果で現在論文作成中である。36例中有効な変異が検出されなかった1例を除いた35例でdigital PCR解析が行われた。Digital PCRは1解析あたりのコストが低く解析も簡便であるため繰り返し検査にすぐれる。intensiveなctDNAモニタリングは早期再発発見や正確な治療効果判定を可能とすることが示された。現在60例まで治療前原発巣組織および治療前および手術、化学療法、放射線化学療法などの治療中、治療後の血漿サンプルを収集中であるが、次のセットでは化学療法投与後24-48hrの早期でのctDNA変動を検討中である。当初症例特異的変異を検出するPrimer/Probeの合成に難渋することが予想されたが、動作確認での成功率は90%ほどと良好である。また食道癌の他大腸癌、胃癌、乳癌について同様の解析をしこうしているが、TP53変異が症例間で重複することが多いため、TP53変異のProbe libraryを作成し、Database上頻度の高いTP53変異についてはPrimer/Probeをデザイン済みである。これにより原発巣変異解析からdigital PCR primer/probeを作成するまでの時間を短縮することができ、より臨床に実践しやすいよう準備をすすめている。症例の観察期間中央値は473日 で、計471の血漿サンプルのctDNA解析を施行され、進捗状況も良好である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策の1つとして、本研究で用いている「癌腫特異的遺伝子パネルを用いた次世代シークエンサーによる変異スクリーニングを行い、高VAFを有する検出変異のdigital PCRによるctDNAモニタリングシステム」の有用性を明らかにすることがある。現在ctDNA研究では、複数の遺伝子領域を解析可能な次世代シークエンサーによる血漿DNA解析やKRAS, EGFR, PIK3CA, BRAFなどのActionableなhotspot変異をdigital PCRでモニタリングに関する報告が多い。数週間ごとの化学療法サイクルの効果判定、再発疑い時の短期間での繰り返し検査、癌の5年のfollow upなど個々の患者の検査回数を考慮すると、1解析で数万~10万円のコストを要し解析に専門的知識・時間を要するNGSは臨床現場での血漿サンプルのモニタリングには実践困難と思われる。Digital PCR解析は1解析のコストは1000円程度、解析時間は数時間であり臨床実践は容易であるが、市販のHotspot変異assay以外の血漿モニタリングはほとんど行われていない。本研究で用いているシステムはHotspot変異を有さない食道癌のような癌腫を含めすべての悪性腫瘍に適用可能である。食道癌の解析をすすめるとともに胃癌、大腸癌、乳癌をはじめ多種の癌腫でも解析を行っていく予定である。本年度よりゲノム医療がスタートとなるが、これまでの報告ではゲノム検査によりactionableな変異が同定され、治療に結びついたとされる症例は10%程とされている。われわれのシステムではActionableな変異がなくても、検出された変異をモニタリングに使用可能である。コンベンショナルな治療の早期介入や投与延長などの指標にも使用でき、またゲノム検査からの分子標的治療が有効に作用しているか、いつまで継続すべきかの判断材料ともなりえ、今後その重要性が認識されるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
デジタルPCR用Prime/Probeは1変異に対し1セット作成するが、1セット10万円弱と高額である。単品で注文するよりも複数セットで発注することで価格を抑えることができる。また、ある程度症例を重ねて変異情報が蓄積すると、検索すべき変異の重要度が判明するため、次年度の変異解析結果を含め対象変異を選定し、次年度予算と残額を合わせ複数のPrimer/probeセットを購入することで、全体の経費削減とした。
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