研究実績の概要 |
平成29年度は、血漿エクソソームmicroRNAに注目し、胃癌の再発予測および予後予測バイオマーカーとしての有用性を検討した。まず、胃癌再発症例に特異性の高い、血漿エクソソームmicro RNAを明らかにするため、Stage Iの胃癌非再発例と肝再発症例および健常人を対象として、 microRNA アレイで発現解析を行い、胃癌患者の肝再発例で特徴的な発現を示した血漿エクソソームmicroRNA-23b (miR-23b)を選出した。次に胃癌症例232例(stage I 74例, stage II 47例, stage III 78例, stage IV 32例)を対象に、再発および予後予測マーカーとしての有用性を癌のstage別に検討した。その結果、胃癌患者の血漿エクソソームのmiR-23b値は健常人に比較して有意に低下した。血漿エクソソームmiR-23b値と臨床病理学的因子との関係を検討したところ、腫瘍径・深達度・肝転移およびStageと有意な関連性を示した。全症例を対象にしたKaplan-Meier生存曲線解析において、エクソソームmiR-23b低発現群の全生存率(OS)と無再発生存率(DFS)は、高発現群に比較し有意に低下した。TNM stage別に検討したところ、Kaplan-Meier生存曲線において、stage I, II, IIIおよびIV症例の血漿エクソソームmiR-23b低発現群のOSおよびDFSは、miR-23b高発現群に比較して有意に低下した。Cox比例ハザードモデルによる多変量解析において、miR-23bは独立した再発および予後予測因子であることが判明した。以上の結果から、胃癌のstage I, II, IIIおよびIV症例において、血漿エクソソームmiR-23bは再発予測および予後予測マーカーとして有用であることが明らかとなった。
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