研究課題/領域番号 |
17K10608
|
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
福島 亮治 帝京大学, 医学部, 教授 (50228897)
|
研究分担者 |
飯沼 久恵 帝京大学, 医学部, 講師 (30147102)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 胃癌 / 腹膜播種 / microRNA / エクソソーム / リキッドバイオプシー |
研究実績の概要 |
本年度は、血漿エクソソームmicroRNAの胃癌の腹膜再発予測バイオマーカーとしての有用性を検討した。まず、胃癌腹膜再発症例に特異性の高い、血漿エクソソームmicro RNAを明らかにするため、Stage IIの胃癌腹膜発例と非再発症例および健常人を対象として、3D gene microRNA PCR ArrayでmicroRNAの発現解析を行い、血漿エクソソームmicroRNA-92a (ex-miR-92a)と血漿エクソソームmicroRNA-21(ex-miR-21)を腹膜再発予測マーカーとして選出した。次に胃癌治癒切除症例129例(stage II 49例, stage III 80例)を対象に、腹膜再発および予後予測マーカーとしての有用性を癌のstage別に検討した。その結果、(1)胃癌患者のex-miR-92a値は健常人に比較して有意に低下し、胃癌患者のex-miR-21は健常人よりも有意に高値を示した。(2)ex-miR-92a値と臨床病理学的因子との間に有意な関連性は認められなかった。Ex-miR-21値とstageに有意な関連性を認めた。(3)Kaplan-Meier生存曲線解析において、ex-miR-92a低発現群またはex-miR-21高発現群の全生存率(OS)と無腹膜再発生存率(PRFS)は、ex-miR-92a高発現群またはex-miR-21低発現群のそれぞれに比較し有意に低下した。(4) OSおよびPRFSに対するCox比例ハザードモデルによる多変量解析において、ex-miR-92a, ex-miR-21,stageは有意差を示した。(5)胃癌stage別に検討したところ、stage IIおよび IIIのex-miR-92a低発現群またはex-miR-21高発現群のOSとPRFSは、ex-miR-92a高発現群またはex-miR-21低発現群に比較し有意に低下した。(6)Cox比例ハザードモデルによる多変量解析において、ex-miR-92aおよびex-miR-21は独立した腹膜再発因子および予後予測因子であることが判明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目的は、胃癌で最も再発頻度の高い再発予測診断に有用な血漿エクソソームmicroRNAを選出し、その有用性を検証することであった。我々はまず、胃癌腹膜再発形式予測に有用な、血漿エクソソーム内包microRNAをmicroRNAアレイで明らかにした。すなわち胃癌のstage IIで腹膜再発を認めなかった症例と、stage IIで術後腹膜再発をきたした症例と健常人の3群に分けて、腹膜再発症例で発現がもっとも顕著であったex-miR-92aとex-miR-21を選択した。次に、胃癌臨床サンプル129例を対象に、ex-miR-92aとex-miR-21の腹膜再発および予後予測マーカーとしての有用性を、Kaplan-Meier生存曲線およびCox 比例ハザードモデルにより解析で、胃癌のステージ別に明らかにした。本年度は、胃癌の腹膜再発予測可能な血漿エクソソーム内包miR-92aとmiR-21のバイオマーカーとしての有用性を証明することができ研究目的をほぼ達成することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
胃癌の血液中のtumor-free DNAを測定し、バイオマーカーとしての有用性を明らかにする。特に近年、マイクロサテライト不安定性の高い(MSI-High)またはミスマッチ修復機構の欠損(deficient mismatch repair : dMMR)した固形癌を対象に、免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-1抗体薬ペムブロリズマブの承認がおりた。胃癌は大腸癌とともに、MSI-highを示す症例の頻度が高いことが知られている。今後は、MSIも含んだ血漿free-DNAの測定法の開発および解析を試み、免疫チェックポイントも視野に入れたliquid biopsyの分子マーカーを明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
microRNAアレイや遺伝子抽出用の試薬をまとめて購入することにより、予定よりも価格を抑えることができたため、次年度使用額が生じた。今後は、MSIの測定や次世代シークエンスなどの費用にあてる予定である。
|