研究実績の概要 |
VASH-1のリキッドバイオプシーへの応用に関する検討 (1) 検体の採取と保存:食道癌患者から採取した血漿と尿は凍結保存し,手術で摘出した腫瘍組織はホルマリン固定後にパラフィン包埋ブロックとして保存する.検体採取の時期は,手術患者は術前,術後1か月,再発時とし,化学療法や化学放射線療法を受ける患者は治療の前後とした.2019年4月26日時点で採血・採尿の検体数は106例となった. (2) VASH-1 ELISA 法:抗VASH-1抗体を用いて,VASH-1濃度測定用のELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法を確立した.健常成人の血漿を対照とした. (3) 血液・尿中の濃度測定:血漿は上記ELISA 法で血漿中VASH-1濃度を測定し,臨床腫瘍学的因子との関連性について検討した. (4)2017年2月から2019年1月までに当院にて治療を開始した食道扁平上皮癌患者86例を対象として検討した.血漿VASH-1濃度の平均値は,腫瘍径50mm以上の症例は,腫瘍径50mm未満の症例に比べて高値であった(腫瘍径50mm以上2401±1470fmol/ml, 腫瘍径50mm以下1746±1318fmol/ml, P=0.04). 年齢、性別、TNM Stage、PET-CTの原発巣のSUVmax、化学療法の奏効率、術後再発の有無、予後に関しては有意差を認めなかった.血漿VASH-1濃度高値は,瘍径の増大など,腫瘍の増殖と関連していると考えられた.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,検体採取(採血と採尿)を進めて,上記ELISA 法で血漿中VASH-1濃度を測定し,臨床腫瘍学的因子との関連性について検討する. VASH-2に関しては,Mybiosource社のVASH-2 ELISA Kitを使用し,血漿濃度の測定を開始している. また,手術摘出検体の病理組織は抗VASH-1,2抗体を用いた免疫組織化学染色を行なっており,今後は腫瘍組織におけるVASH-1,2の発現と血漿中のVASH-1,2濃度,臨床腫瘍学的因子との関連から,リキッドバイオプシーとしての血漿VASH-1,2濃度の意義を検討していく.
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