研究実績の概要 |
(1)食道癌患者から採取した血漿と尿は123例で、いずれも凍結保存をし、手術で摘出した腫瘍組織はホルマリン固定後にパラフィン包埋ブロックとして保存した. (2)抗VASH1抗体を用いて,血漿VASH1濃度測定用のELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法を確立した. 血漿VASH2濃度は市販のVASH2 ELISA kitを用いて測定した. (3)血漿は上記ELISA 法で血漿VASH1,VASH2濃度を測定し,臨床腫瘍学的因子との関連性について検討した. (4)89人の食道扁平上皮癌患者の血漿VASH1, VASH2濃度をELISAを用いて測定し,食道癌56例の手術標本の免疫組織学的染色を行い,血漿VASH1, VASH2濃度と組織におけるVASH1, VASH2発現の関係を解析した. 血漿高VASH1濃度群は血漿低VASH1濃度群に比べ,より多くのリンパ節転移を認め (P=0.01) , 浸潤性の増殖を示した (P=0.05) . 病理組織学的因子の解析では血漿高VASH2濃度群は血漿低VASH2濃度群に比べ低分化であった (P<0.01) . 血漿高VASH1濃度群は血漿低VASH1濃度群に比べ組織における高VASH1発現を多く認め (P=0.03) , また血漿高VASH2濃度群は血漿低VASH2濃度群に比べて組織における高VASH2発現を多く認めた (P=0.04) . 本研究では血漿VASH1濃度はリンパ節転移や浸潤形式に,血漿VASH2濃度は分化度に関連し,両者ともに血漿濃度高値が悪性度の高さに関連していた.また血漿VASH1, VASH2濃度は組織におけるVASH1, VASH2の発現と関連していた.この結果より血漿VASH1, VASH2濃度が食道扁平上皮癌のバイオマーカーとして有用であると考えられた.
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