研究課題
日本人の食道がんではp53遺伝子の変異が最も高頻度であり、実際の臨床検体の検討でも多くの症例で、p53経路がloss of functionであることが知られている。また、同疾患では抗がん剤や放射線治療に抵抗性であることが多いが、これも同経路の失活が重要な働きをしている。したがって、このp53経路の正常化が本疾患の治療に関して標的の一つであると想定される。そこで、p53正常型分子を発現するアデノウイルス用いて、ヒト食道がん細胞株に感染させると、p53遺伝子型に関わらず殺細胞効果が生じていた。すなわち、食道がんではp53分子から細胞死にいたる経路が保持されており、p53分子機能を正常化できる薬剤は食道がんの新しい治療薬となりうる。この観点からp53分子の分解を阻害し同分子の安定化を図る化合物の細胞障害性を検討すると、同障害活性は主に非p53経路によることが判明した。次に、変異型のp53分子を正常型に変換しうるPRIMA, APR-246およびCP-31398について検討すると、CP-31398のみが細胞死を誘導できた。このとき、p53分子の発現上昇は一定しなかったが、p21分子の発現はp53遺伝子型によらず上昇した。また転写因子YY1がこのp21分子発現に関与していることが、同因子のsiRNAによって確認された。さらに、CP-31398ではp53分子が正常型の場合、Hippo経路のeffector経路の一つであるFAK活性の阻害薬と併用すると、相乗的に細胞障害活性が生じていたが、p53分子が変異型の場合は、併用によってむしろ阻害的に作用していた。正常型の場合は、CP-31398とFAK阻害剤の併用によって、単独よりもより強くp53分子発現が誘導され、その過程にはDNA障害が関与しており、特にCHK-2のリン酸化が関与していることが判明した。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Apoptosis
巻: - ページ: -