研究課題
当グループでは、代謝改善手術である十二指腸腔腸吻合術(Duodenal-jejunal bypass: DJB)を施行し、その代謝改善効果の機序の解明に取り組んできた。これまで、DJBを施行すると著明な体重増加抑制効果および糖尿病改善効果を認める一方、胆膵路(Bilio-pancreatic limb: BPL)を切除することで、消化液と混じた食餌が流れる共通管(Common channel: CC)の長さが同等なのにもかかわらず、DJBによる減量・代謝改善効果が全くキャンセルされる事実を報告した。つまり、BPLの存在が減量および代謝改善効果に重要であることを示した。また、DJB術後の血中胆汁酸レベルの上昇を確認した。一方、非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic Steatohepatitis:NASH)に関しても、DJBによる改善効果が期待され、欧米食を模したFast Food Dietによる食餌誘発性NASHモデルラットを初めて確立し、DJBによるNASHの改善効果を報告した。このモデルにおけるNASHの改善効果は、脂肪蓄積よりもむしろ炎症反応および結果として観察される肝組織の線維化の抑制を主とするものであった。NASHの発症から進行については、two hit theoryが提唱されており、肝組織への脂肪の蓄積に続くエンドトキシンや胆汁酸などによる酸化ストレス(2nd hit)が必要とされる。DJB術後の胆汁酸レベルの上昇、腸内細菌叢の変容、さらにはNASHモデルでの炎症反応抑制に起因すると思われるNASH改善効果を確認したことで、DJBによる胆汁酸レベルの上昇と腸内細菌叢の変容が、NASH発症・進展における2nd hit(酸化ストレス)を軽減すること、また、その効果がBPLの切除で先行研究と同様にキャンセルされる可能性を考えている。
3: やや遅れている
実験のコストおよび発展性を考え、マウスモデルの確立およびマウスでの十二指腸腔腸吻合術(Duodenal-jejunal bypass: DJB)施行を模索していた。当初予定していたマウス手術モデルの確立に難渋している。教室で実績のあるラットモデルでの研究継続について検討している。
食餌誘発性ラットモデルでの研究継続。欧米食を模したFast Food Diet(FFD)モデルラットに対して、代謝改善手術である十二指腸腔腸吻合術(Duodenal-jejunal bypass: DJB)を施行する。代謝改善効果において最も肝要な要素と考えている胆膵路(Bilio-pancreatic limb)を有するモデルと、BPLを切除したモデルでNASHの経過を観察し、DJBの代謝改善効果およびその機序の解明に挑みたい。特にBPLの存在により、胆汁酸動態や腸内細菌叢の変化を介してエンドトキシンに起因する慢性炎症などの酸化ストレス軽減に寄与することを示したい。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 7件)
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