研究課題/領域番号 |
17K10623
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
大谷 研介 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 医師 (20757497)
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研究分担者 |
野澤 宏彰 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (80529173)
川合 一茂 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80571942)
畑 啓介 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (60526755)
渡邉 聡明 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80210920) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 上皮間葉転換 / CD133 / hypoxia |
研究実績の概要 |
癌の浸潤や転移の過程において上皮間葉転換(EMT)の関与が近年注目されている。固形癌の中心部は酸素分圧が低い低酸素状態(hypoxia)にあることが知られるが、我々は特に大腸癌細胞に着目し、このhypoxiaが大腸癌細胞のEMT形質獲得の1つのtriggerとなることをこれまで見いだし報告してきた。一方CD133は大腸癌における癌幹細胞マーカーの1つの候補とされるがその意義については未だ不明な点が多い。低酸素状態においてCD133(+)細胞がEMT様の形態変化を来すのに対しCD133(-)細胞では変化を認めなかったことから、CD133がhypoxiaにおける癌のEMTに関与し、その結果癌の浸潤や転移に促進的に働いているのではないかという仮説に至った。本研究はhypoxiaをtriggerとするEMTにおけるCD133の役割の解明を目的とする。
本年度においてはIn vitroでの検討を行った。ヒト大腸癌細胞株を磁器細胞分離法(MACS)を用いてCD133(+)及び(-)細胞に分離した。これを低酸素環境下で培養し細胞増殖能、およびEMT関連蛋白の発現をFlow-cytometryを用いて評価した。またE-cadherinやVimentin等のEMT関連蛋白を定量することにより、低酸素環境下にてCD133(+)細胞で特に強いEMTが誘導されること、また正常酸素環境に戻した際に、急速に間葉系の形質から上皮系の形質へと戻ることが確認された。さらに癌の転移形成に大きな役割を果たすIntegrin蛋白についてもCD133(+)細胞と(-)細胞で大きくその発現が異なることが分かった。またこれに伴い低酸素下ではCD133(+)細胞では(-)細胞と比べ遊走能が大きく亢進していることも確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸癌細胞株を用いたIn vitroの検討ではほぼ仮説通りの結果が得られ、終了している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は主に遠隔転移を有する大腸癌の臨床検体を用いて、転移の形式とCD133の発現に相関があるかどうかを検討し、In vitroの結果の実臨床における妥当性を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に臨床の大腸癌切除検体及び大腸癌転移巣切除検体を用いた検討を行う予定である。2018年度から一部開始予定であったが、症例の蓄積に若干の遅れがあり、2019年度からの開始となった。このため2019年度の予算88,000円を次年度に繰り越し使用することとした。
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