研究課題/領域番号 |
17K10624
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
亀山 仁史 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40626420)
|
研究分担者 |
島田 能史 新潟大学, 医歯学系, 助教 (20706460)
永橋 昌幸 新潟大学, 医歯学総合病院, 研究准教授 (30743918)
田島 陽介 藤田医科大学, 医学部, 講師 (30757505)
若井 俊文 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50372470)
中島 真人 新潟大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (60588250)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | スフィンゴシン1リン酸 / 炎症性腸疾患 / 潰瘍性大腸炎 / 発癌 / 遺伝子解析 |
研究実績の概要 |
炎症性腸疾患では、慢性炎症に伴う大腸癌の発生リスクの増加が問題となる。脂質メディエーターであるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、炎症と癌の両者によく関連し、マウスモデルで証明されているが、ヒトにおける炎症性発癌への関与はこれまで不明であった。本研究の目的は、「潰瘍性大腸炎に伴う大腸癌患者におけるS1Pの役割を明らかにし、新たな治療法開発へ向けた研究基盤を確立すること」である。 平成30年度には課題研究AとBを主体に研究を進める予定としていた。 ・課題研究A「潰瘍性大腸炎に伴う大腸癌患者におけるS1Pシグナルの役割」として、潰瘍性大腸炎関連大腸癌(CAC)の手術検体を用い、免疫染色により癌部および非癌部におけるS1P産生酵素(pSphK1)の活性化を解析した。その結果、CACでは通常型大腸癌と比較してpSphK1が染色強度・面積ともに高発現していた。通常型大腸癌ではpSphK1陽性例が30%、CACでは90%であった(P < 0.01)。早期癌で検討すると、通常型大腸癌でpSphK1発現を認めなかったのに対してCACでは100%発現を認めた(P < 0.01)。 ・課題研究B「次世代シークエンサー(NGS)による潰瘍性大腸炎に伴う大腸癌の遺伝子変異検索」として、NGSを用いて潰瘍性大腸炎関連大腸癌の遺伝子解析を行った。当科では、既に通常型大腸癌201例に対し,次世代シークエンサー(NGS)を用いて415の癌遺伝子の変異検索を完了しており、データベースを完備している。潰瘍性大腸炎関連大腸癌と通常型大腸癌における遺伝子発現解析を比較し、両者の相違等につき考察し英文論文化した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度としては概ね計画通り遂行されている。 平成30年度には課題研究A「潰瘍性大腸炎に伴う大腸癌患者におけるS1Pシグナルの役割」と課題研究B「次世代シークエンサー(NGS)による潰瘍性大腸炎に伴う大腸癌の遺伝子変異検索」を主体に研究を進めた。課題研究Aの結果は「潰瘍性大腸炎関連大腸癌診断における脂質メディエーター(S1P)解析の有用性」として第73回日本消化器外科学会総会(2018.7鹿児島)で発表した。また、Upregulation of phosphorylated sphingosine kinase 1 expression in colitis-associated cancerとしてJ Surg Res 2018, 231;323-330で論文化した。課題研究BについてはGenomic characterization of colitis-associated colorectal cancerとしてWorld J Surg Oncol 2018, 16;12で論文化した。
|
今後の研究の推進方策 |
通常型大腸癌と比較して、CACでは、より早期の段階からS1Pの発現が関連していること、遺伝子発現の点からも通常型大腸癌と相違がみられることが明らかとなった。研究費は、学会発表にかかる旅費、英文論文化に関わる費用などに使用する予定としている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は潰瘍性大腸炎関連大腸癌の手術症例が少なく、次年度以降に遺伝子解析を行うために予算が繰り越しとなった。
|