2005年11月から2017年4月にかけて根治的切除が行われた大腸癌(以下CRC)の手術検体からDNAを抽出し、総数で3269例に対して、大腸癌関連遺伝子における体細胞遺伝子変異解析を次世代シーケンサーを用いて行なった。現在まで大腸癌を遺伝子変異に基づいて分類した大規模なstudyは認められないため、本研究は遺伝子変異情報から得られた分子病態に基づいた新しい分類を発見することを主目的とする。遺伝子の変異数による分類を行なったところ、有意に変異数が多い二つの群を認めた。ひとつはPOLE遺伝子に変異が認められる大腸癌(POLE mutated CRC)であり、もう一つはマイクロサテライト不安定性のある大腸癌(MSI CRC)であった。それぞれ、大腸癌関連遺伝子に、100 以上、20以上の変異を認めた。変異数の大幅な増加を認めない大腸癌はその他の大腸癌(classical CRC)に分類された。MSI CRCがすでに予後良好群として報告されている一方で、POLE mutated CRCを大規模でシーケンスした報告はいまだ認めず、MSI CRCよりもさらによい予後を示した。MSI CRCが病理学的に低分化型腺癌を示すことが多いのに対して、POLE mutated CRCには病理学的にclassical CRCと違いは認めなかったため、POLE mutated CRCを遺伝子変異情報に基づいて分類することの重要性が示唆された。POLE mutatd CRCには、マイクロサテライト不安定性は認めなかった。臨床的な特徴として、POLE mutated CRCはclassical CRCと比較して若年に発症する。また、classical CRCが直腸やS状結腸に多く認められるのに対してPOLE mutated CRCは右側結腸から左側結腸に偏りなく分布するという特徴が認められた。
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